著者
中村 伸枝 水野 芳子 奥 朋子 瀬尾 智美 眞嶋 朋子 仲井 あや
出版者
文化看護学会
雑誌
文化看護学会誌 (ISSN:18838774)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1_11-1_20, 2022-05-31 (Released:2023-06-06)
参考文献数
16

本研究の目的は,専門看護師として10年以上活動している専門看護師の認定後5年目までの活動の広がりおよび自己教育を明らかにし,文化の視点から考察することである。専門看護師として認定され10年以上活動している7専門看護分野の専門看護師15名に,半構造化面接を実施し,質的帰納的分析を行った。その結果,専門看護師の認定後5年目までの活動として,「所属部署における直接ケアを中心とした活動」,「施設内での横断的活動の確保と定着」,「施設内での専門看護師としての活動」,「施設外に向けた専門看護師としての活動と発信」が得られた。また,専門看護師の自己教育として,「高度実践に向けた事例分析とエビデンスの更新」,「事例検討会や学会活動等を通した高度実践の内省と研鑽」,「サブスペシャリティ強化に向けたスキルの獲得」,「国内外の研修を通した多職種との交流」が得られた。認定後5年目までの専門看護師の活動は,自己教育に支えられた対象者への質の高い看護実践が基盤となり,看護職の文化,組織文化のなかで受入れられていた。専門看護師の活動は,専門看護師の理論やエビデンスに基づいた意図的な働きかけ,質の高い看護の看護スタッフへの浸透,看護管理者のサポートによる職位や立場の変化,多職種への専門看護師の認知などが合わさり,拡大していた。
著者
武分 祥子 柄澤 邦江 岩﨑 みすず 熊谷 寛美
出版者
文化看護学会
雑誌
文化看護学会誌 (ISSN:18838774)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_1-1_10, 2010-03-31 (Released:2018-11-13)
参考文献数
18

飯田市における人々のつながりから地域ケアにおける助け合いの可能性を探るために,この地域での「結い」の実態を把握することを目的とした。そのために,飯田市郊外12地区,19名の情報提供者に対して聞き取り調査を実施した。 その結果,飯田市では昔は農作業を中心に労働力を提供しあう「結い」が盛んに行われていたことが明らかになった。現在では,「結い」は縮小しているものの冠婚葬祭や農作業の一部などで行われていた。【現在の人々のつながり】では,「結い」を通してできた人々のつながり,公的あるいは民間組織活動によるつながり,共同での作業や行事,親戚によるつながり,家族のつながりがあった。【人々のつながりの変化】では,「結い」の衰退,農作業・仕事の変化,地域のつながりの変化,家族の結びつきの変化があった。さらに,【これからの人々のつながり】では,別の形の組織化,地域の中での人間関係の維持を望み,その一方で将来の地域での助け合いの困難を懸念していた。 以上より,飯田市において「結い」はかたちを変えて残ってはいるが,人々のつながりは時代や地域生活とともに変化していること,人々は地域における人間関係の維持の手段として,今後も異世代交流の場や助け合いの組織化を望んでいることが明らかになった。よって,人々のつながりを育むような組織化活動が今後の地域ケアにおいて必要であると考えられた。
著者
辻村 真由子 石垣 和子
出版者
文化看護学会
雑誌
文化看護学会誌 (ISSN:18838774)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_51-1_60, 2018-05-31 (Released:2020-06-26)
参考文献数
20

本研究の目的は,訪問看護師が行う排便ケアに影響を与える在宅高齢者と家族介護者の価値観を明らかにすることである。3年以上の訪問看護経験を有する訪問看護師14名を対象として,個別の半構造化インタビューを実施した。インタビュー内容は,排便ケアを必要とする在宅高齢者(以下,高齢者とする)と家族介護者への支援過程とし,22の高齢者と家族介護者の事例への支援過程が述べられた。得られたデータについて,質的帰納的に分析した。その結果,排便ケアに影響を与える高齢者の価値観として,【便が出ないと大変なことになるので便が出ることは重要だ】【排便という生理的な現象は個人的な営みなので家族であっても手を借りるものではない】【自分や家族の生活を脅かされたくないので,訪問看護師には排便をコントロールしてほしい】などの8のカテゴリーが明らかとなった。また,家族介護者の価値観として,〔便が出ないと腸が詰まって大変なことになる〕〔排便の世話は嫌ではあるが高齢者との関係性があるので断れない〕〔排便の世話は特別に大変であるので訪問看護師に任せたい〕などの8のカテゴリーが明らかとなった。以上より,排便が高齢者の生活の充足感において大きな意味をもつことや,高齢者と家族介護者との関係性に基づいて排便の意思決定がなされていることを踏まえた看護支援の重要性が示唆された。
著者
渡邊 章子 諏訪 さゆり
出版者
文化看護学会
雑誌
文化看護学会誌 (ISSN:18838774)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1_1-1_9, 2017-05-24 (Released:2018-11-13)
参考文献数
24

目 的 中等度,および重度のアルツハイマー型認知症高齢者(以下,認知症高齢者)の家族と専門職の視点を通して,日本の仏式葬送文化の中で認知症高齢者がどのような喪の過程を辿るのかを明らかにし,認知症高齢者の喪の過程への看護支援について示唆を得ること。方 法 データ収集は,認知症高齢者の家族と専門職の各々に60分間の半構造化面接をし,認知症高齢者が辿っている喪の様相を抽出し質的内容分析をした。結 果 対象者は家族3名,専門職2名であった。面接で語られた内容を喪の過程の時期別,および重症度別に並べ分析した。認知症高齢者の喪の過程では,【死別時-葬儀時】では,死別時や葬儀時には配偶者との死別を認識していたが記銘できなかった。【葬儀時-一周忌】では,配偶者がいると思い行動しており,配偶者を想起できる自宅では配偶者のことを尋ねていたが,自宅以外では尋ねなかった。【一周忌-三回忌】では配偶者と一緒に行っていた家族行事の写真撮影時などに「お父さんもっと長生きすれば一緒にいられたのに」と死別を認識する発言が聞かれた。死別から約2年間は,認知症高齢者に家族が同じ説明を繰り返し行っていた。考 察 認知症高齢者の喪の過程では認知症高齢者が葬儀などの儀式に参加するだけでは死別の記銘・保持につながらないことが示唆された。認知症高齢者が現実見当をつけやすくする方法として,認知症高齢者の培ってきた生活習慣などを考慮した説明が重要であることが示唆された。