著者
塚田 久恵 川島 和代 曽根 志穂 石垣 和子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.125-134, 2018-03

地球規模の視野を持ち地域の課題を主体的に解決できる人材(グローカル人材)を育成するため,韓国を研修先とした新たな看護短期研修プログラムの開発を行った.3 年の準備期間を経て,平成27年度に8 日間の研修を実施した結果,様々な保健医療福祉施設の見学やフィールドワークを組み入れたこと,また,住民等との交流プログラムを積極的に導入したことが功を奏し,所期の研修目的と学習目標はほぼ達成できたと考える.一方,今後は,危機管理体制の整備や授業としての位置づけ,引率教員や現地スタッフの介在等についても考慮する必要がある.研修の円滑な実施には,研修先の選定や関係機関との調整について行政機関の協力を得ることも有効である.
著者
塚田 久恵 石垣 和子 辻村 真由子 都筑 千景 金川 克子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.77-88, 2013-03

韓国における保健所の機能と公衆衛生における看護職の役割について現地調査及び文献検討をした.韓国の公衆衛生は,日本と同様,保健所を中核施設として始まり,発展してきた.日本の保健所が主な対人支援機能を市町村に移管し,企画調整や指導研修機能に転換したのに対し,韓国では今日でも保健所が診療機能の保有,保健支所の配置,農漁村では看護職が保健診療員として一次医療を担っている.一方,韓国は,急激な高齢化と,生活習慣病の増加により国民医療費が急増している.そこで,国民健康増進法,地域保健法を制定し,保健所機能の拡大,地域保健を担う看護職の専門化に取り組んできた.さらに,2010年から保健教育を担う保健教育師の養成を開始し,2012年8月には地域保健法改正案を立法予告して保健所の機能を再編強化する方針を打ち出している.今後,韓国の保健所において,企画調整,情報管理などが法的に付加されることにより,益々機能が強化されると考える.(著者抄録)
著者
三輪 真理 辻村 真由子 鈴木 育子 石垣 和子 山本 則子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.84-92, 2009-04-10 (Released:2016-08-25)
参考文献数
10

摘便終了後の便失禁は在宅療養者と家族の大きな負担である. 本研究は, 摘便後の便失禁を防ぐ方法として実践家が用いる技術を明文化し, その有効性を実証的に検討した. 便失禁を予防する技術を看護師 4名 ・ 家族介護者 1名から聞き取ってまとめ, 訪問看護師 8名にこのまとめに基づいて摘便を実施してもらい, 実践からデータ収集して検討した. 12名の療養者への計 68摘便のデータを得た. ①まとめに基づいた摘便の実施により便失禁は減少しなかった. ② 「粘液が出る」 という摘便終了の目安がみられた摘便では, みられなかったときよりも便失禁が有意に少なかった. ③ 「粘液が出る」 は浣腸を実施した場合にのみ発生した. ④ 「腸がおりる ・ とじる」 という目安がみられた摘便では, 便失禁が少ない傾向がみられた. 浣腸をする場合, 粘液が出るまで摘便を実施することが, 便失禁予防に役立つ可能性がある. 「腸がおりる ・ とじる」 という目安はさらに検討する必要がある.
著者
辻村 真由子 石垣 和子
出版者
文化看護学会
雑誌
文化看護学会誌 (ISSN:18838774)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_51-1_60, 2018-05-31 (Released:2020-06-26)
参考文献数
20

本研究の目的は,訪問看護師が行う排便ケアに影響を与える在宅高齢者と家族介護者の価値観を明らかにすることである。3年以上の訪問看護経験を有する訪問看護師14名を対象として,個別の半構造化インタビューを実施した。インタビュー内容は,排便ケアを必要とする在宅高齢者(以下,高齢者とする)と家族介護者への支援過程とし,22の高齢者と家族介護者の事例への支援過程が述べられた。得られたデータについて,質的帰納的に分析した。その結果,排便ケアに影響を与える高齢者の価値観として,【便が出ないと大変なことになるので便が出ることは重要だ】【排便という生理的な現象は個人的な営みなので家族であっても手を借りるものではない】【自分や家族の生活を脅かされたくないので,訪問看護師には排便をコントロールしてほしい】などの8のカテゴリーが明らかとなった。また,家族介護者の価値観として,〔便が出ないと腸が詰まって大変なことになる〕〔排便の世話は嫌ではあるが高齢者との関係性があるので断れない〕〔排便の世話は特別に大変であるので訪問看護師に任せたい〕などの8のカテゴリーが明らかとなった。以上より,排便が高齢者の生活の充足感において大きな意味をもつことや,高齢者と家族介護者との関係性に基づいて排便の意思決定がなされていることを踏まえた看護支援の重要性が示唆された。
著者
山本 則子 石垣 和子 国吉 緑 川原(前川) 宣子 長谷川 喜代美 林 邦彦 杉下 知子
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.660-671, 2002-07-15
参考文献数
23
被引用文献数
10

<b>目的</b> 「介護に関する肯定的認識」が,介護者の心身の生活の質(QOL)や生きがい感および介護継続意思に与える影響を,続柄毎に検討することを目的とした。<br/><b>方法</b> 東京・神奈川・静岡・三重・沖縄の全21機関において訪問看護を利用している322人の高齢者の家族介護者に質問紙調査を実施した。介護負担感が続柄により異なるという過去の報告に鑑み,分析は続柄別に行った。分析には QOL,生きがい感,介護継続意思を従属変数に,属性および介護に関する肯定的認識・否定的認識を独立変数とした重回帰分析およびロジスティック回帰分析を用いた。<br/><b>結果</b> 1) 身体的 QOL に「肯定的認識」は関連しない。<br/> 2) 心理的 QOL と「肯定的認識」の関連は続柄により異なる。介護者が夫および息子の場合は「肯定的認識」のみが,妻の場合は「肯定的認識」,「否定的認識」の両者が心理的 QOL に関連する。娘の場合は「否定的認識」のみが心理的 QOL に関連する。嫁の場合はどちらも心理的 QOL に関連しない。<br/> 3) いずれの続柄でも生きがい感には「肯定的認識」が強く関連する。夫および息子では「否定的認識」は生きがい感に関連しない。<br/> 4) 介護継続意思には,夫および息子では「肯定的認識」,「否定的認識」の双方が関連するが,妻・嫁では「肯定的認識」のみが関連する。娘では「否定的認識」が介護継続意思に関連する。しかし,続柄別の違いはわずかと思われる。<br/><b>結論</b> 介護者の心理的 QOL や生きがい感を高める支援を考えるため,介護の継続を予測するためには,介護の肯定的認識を把握することが重要と考えられる。介護の肯定的認識の影響は続柄別に異なるため,支援に際しては続柄別に検討を行うことが必要である。
著者
塚田 久恵 石垣 和子 辻村 真由子 都筑 千景 金川 克子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.77-88, 2013

韓国における保健所の機能と公衆衛生における看護職の役割について現地調査及び文献検討をした.韓国の公衆衛生は,日本と同様,保健所を中核施設として始まり,発展してきた.日本の保健所が主な対人支援機能を市町村に移管し,企画調整や指導研修機能に転換したのに対し,韓国では今日でも保健所が診療機能の保有,保健支所の配置,農漁村では看護職が保健診療員として一次医療を担っている.一方,韓国は,急激な高齢化と,生活習慣病の増加により国民医療費が急増している.そこで,国民健康増進法,地域保健法を制定し,保健所機能の拡大,地域保健を担う看護職の専門化に取り組んできた.さらに,2010年から保健教育を担う保健教育師の養成を開始し,2012年8月には地域保健法改正案を立法予告して保健所の機能を再編強化する方針を打ち出している.今後,韓国の保健所において,企画調整,情報管理などが法的に付加されることにより,益々機能が強化されると考える.(著者抄録)
著者
片倉 直子 山本 則子 石垣 和子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.2_80-2_91, 2007-06-20 (Released:2011-09-09)
被引用文献数
5 1

本研究は,統合失調症をもつ者への効果的な訪問看護を,その目的と技術に着目して明らかにした.対象は,統合失調症をもつ利用者を2年以上継続して看護し,その間利用者に入院のなかった経験をもつ7名の訪問看護師,およびこの7名の訪問看護を受けた9名の利用者である.訪問看護師へのインタビューと訪問場面の参加観察を,質的に分析した.効果的な訪問看護では,利用者の地域生活に対する意志を看護師が了解する前後で目的が変化していた.意志を了解する前の段階では,「利用者の意志表出に道を付ける」が目的となり,「利用者の状況を五感でみる」「精神障害者として生きてきた体験の把握」「その人らしい特性の把握」「意図的に日常(ふだん着)の自分を使う」等の看護技術を用いていた.利用者の意志を了解した後は,「利用者に必要な生活能力を育成する」が目的となり,一部上記の技術を継続しながら「生活上の対処能力の把握」「意図的な日常の自分と専門家としての自分を使い分ける」等の技術を用いていた.
著者
金子 紀子 石垣 和子 阿川 啓子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.85-94, 2016

本研究の目的は,農村地域で子育て中の母親が感じる母親自身の幼少期と現在における地域のつながりを明らかにすることである.農村地域で乳幼児を子育て中の母親8 名に実施したグループインタビューの内容を質的に分析した.母親自身の幼少期における地域のつながりは,【祖母や母に連れられ大人に混じった】,【子どもだけで自由に遊びまわる世界があった】,【大人は子どもを温かく見守っていた】,【顔見知りの関係で安心感があった】であった.現在の地域のつながりは,【近所付き合いの程度には差がある】,【小学校区内での人付き合いは分からない】,【近所にはない子ども同士のふれあい方がある】,【地縁組織の一員になる】,【不審者等犯罪から子どもを守る】であった.幼少期は総体として肯定的に捉えられ,現在においては希薄化している現状と,農村地域におけるソーシャルキャピタルの正と負の両面を捉えていたと示唆された.
著者
野口 美和子 大湾 明美 石垣 和子 北村 久美子 山崎 不二子 植田 悠紀子
出版者
沖縄県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、島嶼環境を活かし「島嶼から学ぶ」島嶼看護学教育の看護学士課程への導入促進に資することであった。島嶼看護学教育の効果は、学生、教員、地域の専門職において"島嶼での理解の深まり""島嶼看護の魅力と理解""学習力・教育力の向上""看護実践力・地域力への貢献"があった。課題は、"島嶼での学びの意義"を多くの大学が挙げていた。その解決に向け島嶼看護学教育内容を体系化する必要性が提言された。
著者
金 憲経 鈴木 隆雄 吉田 英世 大渕 修一 權 珍嬉 石垣 和子 島田 裕之 吉田 英世 齋藤 京子 古名 丈人 大渕 修一 鈴木 隆雄
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

老年症候群の複数徴候保持者の割合は15.3%と高く,老年症候群の複数徴候には転倒恐怖感,通常歩行速度が有意に関連した.複数徴候保持者の徴候解消を目的とした3ヶ月間の包括的運動プログラムの効果を検証した結果,生活機能低下や尿失禁が有意に改善された.とくに,歩行機能が向上された群で改善率が高かった.以上の結果より,包括的運動介入は複数徴候改善に有効であり,歩行機能の向上は徴候改善に寄与することを検出した.
著者
石垣 和子 杉下 知子
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

朝日新聞記事を中心に、第2回の社会福祉制度審議会勧告の出された1960年前後から現在に至る掲載記事が、高齢者介護に関して発してきた情報の質量を検討した。検討素材として2種類のデータベースを作った。一つは「としよりの日」あるいは「敬老の日」である9月15日の紙面で何がどう語られていたかに関するデータベース、もう一つは9月15日に限定せずに社説のみについて関連する記事を集めたデータベースである。社説データベースでは、法律や制度の新設・変化や関連委員会の提言・勧告、大きな調査などの結果発表を受け、社としての公式の見解が表明されていると受け止められるものが多かった。社説における高齢者介護問題の扱いは、1962年までは全く扱っておらず、その後は1982年を除いて毎年扱っていた。高齢者の在宅ケアを推奨する方向性の認められる社説は1970年に初めて出現し、1975年以降は頻繁に出現していた。敬老の日の記事では、社説、天声人語、読者の声、家庭面、社会面、1面、総合面など、あらゆる紙面にて関連記事が扱われていた。紙面に占める関連記事の量(記事面積で算定)は、1960年に入ると急激に増加し、そのうちでも敬老の日制定(1966年)、老人医療費無料化(1973年)、在宅支援サービスの始まり(1979年)、老人保健法の制定(1983年)に対応してピークが見られ、国策に敏感に対応していることが判明した。1987年には在宅サービスの拡充と老人保健施設の導入に対応して大きなピークを示した後、記事量は減少し現在に至っている。人々の関心と意識を反映すると思われる声欄では、1964年以降高齢者に関する話題の投書が取り上げられるようになっており、1974年、1980年から1983年においてはすべての声が高齢者の話題であった。1960年代に多く見られた、施設拡充や入所促進への肯定的な声が、1980年代になると住宅ケア推進へと傾く傾向が見られた。