著者
角田 憲治 永田 康喜 神藤 隆志 北濃 成樹 大藏 倫博
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第73回(2023) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.240, 2023 (Released:2023-12-01)

加齢に伴い、歩行や自転車による活動的移動が特異的に減少することが知られている。自転車は、歩行よりも広範囲の移動を可能とし、膝等の関節への負担も少ない。本邦は、高齢者であっても、そのほとんどが自転車の乗車技術を持っている希少な国であり、交通網が脆弱な中山間地域では、自転車は高齢者の生活を支える移動手段となっている。本研究では、中山間地域在住高齢者を対象に、二時点の郵送調査と、市データベースに基づく追跡調査により、自転車の継続的利用の重要性を要介護化および死亡リスクの低減という観点から検証する。茨城県笠間市における二時点の郵送調査(2013年と2017年)の両方で、自転車利用について回答が得られた3633名の高齢者を対象に、市データベースを用いて要介護1以上の認定と死亡の状況を2021年まで追跡した。Cox回帰分析を用い、年齢、性、学歴、経済状況、同居有無、BMI、各種既往、ストレス度、外出頻度、主移動手段としての車利用有無、中高強度活動量を調整した。欠損値は多重代入法により補完した。追跡の結果、二時点における継続的な自転車利用者は、一貫した未利用者に比べて、有意に低い要介護化リスク(HR=0.75, 95% CI=0.58―0.98)および死亡リスク(HR=0.57, 95% CI=0.40―0.81)を示した。一方、自転車利用の中止、開始については、リスク低減と有意な関連を認めなかった。また、補足として行った一時点(2013年)の自転車利用量(分/週)に基づく分析では、両アウトカムと有意な関連を認めなかった。高齢者における継続的な自転車利用は、要介護化および死亡のリスク低減と関連するが、利用中止や開始ではこのような関連は認められないことがわかった。また、一時的な利用状況の評価では、このような関連性は検出できないため、複数回にわたって行動を評価することの重要性が確認された。
著者
山際 大雅 村山 敏夫 栗原 裕佳 西田 唯人
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
日本体育・スポーツ・健康学会予稿集 第73回(2023) (ISSN:24367257)
巻号頁・発行日
pp.473, 2023 (Released:2023-12-01)

近年、道路交通環境の整備や自動車安全装備の開発等により交通事故の発生件数は減少傾向にあるが交通事故全体に占める高齢ドライバーの割合は増加傾向にある。特に車両同士の交通事故は一時停止交差点における出会い頭事故が最も多く発生している。また、高齢ドライバーは加齢に伴う筋力の衰えや視力の低下、関節可動域が狭くなることで膝関節を大きく屈曲させた運転姿勢が散見される。以上より本研究は高齢ドライバーに散見される不適切な運転姿勢が一時停止後の発進局面における運転行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。被験者は運転に支障をきたす基礎疾患がない60代及び70代の高齢者を対象とした。実験は新潟県運転免許センター内の屋外試験場を使用し、実車両を用いて一時停止交差点の通過を含む指定のコースを走行させた。実験車両には被験者となるドライバーのみが乗車し、実験者は無線で車外から指示を行った。走行は自動車メーカー等で推奨されている姿勢に近い標準姿勢と高齢者に散見される膝関節を屈曲させた前傾姿勢で行い、姿勢間で下肢の筋活動及び車両挙動を比較した。筋活動は表面筋電計を用いて内側広筋・外側広筋・大腿直筋・大腿二頭筋・前傾姿勢・腓腹筋・ヒラメ筋の7箇所の測定を行い、各被験筋の筋活動量を指標とした。車両挙動は実験車両に搭載されているセンサによりCANデータを取得し、発進時の加速度及び車両速度を指標とした。本研究により交通安全教育の推進や高齢ドライバーの運転行動を補う自動車の開発に寄与することが期待される。