著者
池 修 人見 滋樹 田村 康一 和田 洋巳 渡部 智 清水 慶彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 呼吸器外科 (ISSN:09174141)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.72-79, 1989

胸腔ドレナージが有効かどうかはドレーンの位置のみならず内腔の開存性にも依存しているが, 通常使用されている塩化ビニル (PVC) 製ドレーンの抗血栓性は良好とは言えない.一方, シリコーンは優れた抗血栓性を有するが, 胸腔ドレーンとするには十分な強度を持っていない.そこで, PVCにシリコーンを被覆したドレーン (S-PVC) を用いてその有用性を検討した.<I>in vitro</I>および<I>ex vivo</I>での試料表面への血餅付着率および電顕 (SEM) 観察をおこなったところ共にS-PVCのほうがPVCよりも良好な抗血栓性を示した.次に, 開胸術時にPVCおよびS-PVCドレーンを使用し, その内腔のSEM観察を行ったところPVCの表面には多量の血餅が付着していたが, S-PVCの表面は平滑で血餅はほとんど認められず, 優れた抗血栓性が示された。従って, 術後出血の持続が予想される症例や, 胸腔ドレナージが長期におよぶ症例に対してS-PVCドレーンを用いることは有用であると思われた.