著者
池 修 人見 滋樹 田村 康一 和田 洋巳 渡部 智 清水 慶彦
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 呼吸器外科 (ISSN:09174141)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.72-79, 1989

胸腔ドレナージが有効かどうかはドレーンの位置のみならず内腔の開存性にも依存しているが, 通常使用されている塩化ビニル (PVC) 製ドレーンの抗血栓性は良好とは言えない.一方, シリコーンは優れた抗血栓性を有するが, 胸腔ドレーンとするには十分な強度を持っていない.そこで, PVCにシリコーンを被覆したドレーン (S-PVC) を用いてその有用性を検討した.<I>in vitro</I>および<I>ex vivo</I>での試料表面への血餅付着率および電顕 (SEM) 観察をおこなったところ共にS-PVCのほうがPVCよりも良好な抗血栓性を示した.次に, 開胸術時にPVCおよびS-PVCドレーンを使用し, その内腔のSEM観察を行ったところPVCの表面には多量の血餅が付着していたが, S-PVCの表面は平滑で血餅はほとんど認められず, 優れた抗血栓性が示された。従って, 術後出血の持続が予想される症例や, 胸腔ドレナージが長期におよぶ症例に対してS-PVCドレーンを用いることは有用であると思われた.
著者
福瀬 達郎 有安 哲哉 張 謙益 室恒 太郎 水野 浩 神頭 徹 青木 稔 田村 康一 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.829-834, 1991-10-20
被引用文献数
4

当科に於ける過去17年間の肺癌総手術症例733例中, 40歳未満の若年者肺癌手術症例は24例(3.3%)であった.最年少は17歳女性で, 30歳未満は全例腺様嚢胞癌であった.性別は, 女性7例(29.2%)で肺癌手術症例全体での女性25.2%に比しやや多い.発見動機は, 検診が9例(37.5%), 有症状例が15例で, 症状の内訳は, 咳嚇が9例と最も多かった.若年者の非喫煙者の率は33.3%と総手術例の17.1%に比し有意に高かった.組織型は腺癌が10例と最も多く, 扁平上皮癌は少なかった.病期はI期11例, II期1例, lIIA期6例, IIIB期5例, IV期1例であり, 進行癌は50.0%で全体の59.6%に比しやや少なかった.手術は絶治12例, 相治6例, 相非2例, 絶非2例, 試験開胸2例であった.手術成績は, 5生率74.1%と良好で, 病期別ではI期列は5生率100%だったが, IIIA期例は5生率0%と悪かった.検診例に進行癌は比較的少なく, 予後良好であった.