著者
得丸 定子 川島 名美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第49回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2006 (Released:2007-02-11)

【目的】 近年ペットロスという用語は一般化してきたが、わが国における学術研究論文数は一桁以内でまだ少ない。欧米では1984年から学術論文が発表されているが、ほとんどが米国の学術誌である。ゆえに、本研究では昨年本研究大会で発表した日本の大学生対象の調査項目と同一の調査を米国中西部の大学生を対象に行い、「いのち教育」を実践するための資料を得ることを目的とした。 【方法】 アイオワ大学の共同研究者の多大な援助を得て、調査「Questionnaire Concerning Pet and Pet Loss」を、2004年3月~同年6月にかけて、アイオワ州の3大学、ミズーリ州1大学の合計4大学の学生194名(有効回答率78.4%)対象に実施した。調査内容は「心理尺度に関するもの」82項目を中心に、「属性、信仰する宗教とその有無」「ペットの飼育経験」「ペットの位置づけ・価値観」「ペット喪失時の状況と対応」の計116項目と自由記述である。分析は因子分析(主成分分析、バリマックス回転)、分散分析、多重比較、比率の差の検定、KJ法を行った。 【結果】 1.因子分析結果 心理尺度に関する質問項目について因子分析を行い5因子抽出された。因子名は第1因子”自尊・自信型“、第2因子”努力・前進型“、第3因子”共感・協力型”、第4因子”抑うつ型“、第5因子”宗教肯定型”とした。 2.因子とペットロスの関連性の検討 心理傾向を表す上記5因子を高群と低群にわけ、それらの高低群と「ペットの位置づけ・価値観」「ペットを失った時の状況」「ペットを失ったときの自分自身の対処法」とを多重比較を行い、有差を検討した。その結果、心理傾向とペットの位置づけやペットロスの状況、対処法との関連性が得られ、各人に応じたペットロス対処を行うことへの手がかりが示唆された。詳細な結果は口頭発表で行う。 3.「性別」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 性別では、女性のほうが男性よりもペットを失ったとき「誰かに話を聞いてほしい」「我慢せずに泣けばよい」「普段と変わらず接してほしい」の項目で有意に高い結果を示した。 4.「信仰心」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 調査対象者の約9割が信仰する宗教を明確に持っており、信仰心の低い人のほうが「ペットを飼えなくなった場合、捨ててしまいたい」と答えた人が多く、信仰心の高い人の方が「ペットを失った時、代わりのペットを飼いたい」と答えた人が多かった。 5.「飼育経験」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 本調査ではペット飼育経験者150名、未経験者2名であり、検定が成立しなかった。 6.「ペット喪失経験」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 ペットを亡くした経験のある人のほうがない人よりも「安楽死をさせる」が有意高く、「ペットを亡くした時、新しいペットの飼育を勧めてほしい」は有意に低かった。 7.自由記述 ペットを亡くした時の思いは「悲しみ、驚き、怒り、寂しさ」の情緒的な反応が72%で最も多かった。悲しみから立ち直ったきっかけは「新しいペットを飼った、他のペットを大切にする」が23%で最多であった。 【考察】 心理尺度では日本は8因子、米国は5因子であり、そのままの単純比較はできなく、日米比較の詳細は次発表で行う。米国では信仰を持つ割合や飼育経験が高いこと、ペットロス研究は日本と異なり約20年も前から取り組まれていることがペットロスとその対処との関連性に影響を与えていると考えられる。日米比較は次回行う。