著者
西村 哲夫 山下 孝 広川 裕 井上 武宏 築山 巌 渋谷 均
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
日本放射線腫瘍学会誌 (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.35-38, 2006

【目的】JASTRO小線源治療部会では,わが国では初めての小線源治療の事故に関するアンケート調査を行ったのでその結果を報告する.<br>【対象・方法】密封小線源を保有する国内の254施設に対して,2002年 9 月から2004年 8 月までの 2 年間に発生または判明した事例の報告を依頼した.<br>【結果】回答は224施設からあり,事故の事例は13 施設より14 件の報告があった.内容は1)分割照射の1 回線量が処方線量の50%を超える過剰照射または50%未満の過少照射:6 例,2)アプリケータ装着後の装置のトラブルにより治療開始ができない事例:3 件,3)線源移送のトラブル:2 件(いずれもコバルトラルス),4)その他 3 例(作業者の被曝,一時装着低線量率線源の体内残留,操作エラー)であった.<br>【結論】今回わが国で初めて小線源治療に関する事故の調査を行い14件の報告があった.その原因は治療計画や操作のエラーによるものが多く,事故の発生予防の上で示唆に富むものであった.今後同様の調査が継続して行われることが望まれる.
著者
馬場 祐之 西村 龍一 水上 直久 村上 龍次 森下 昭治 冨高 悦司 野津手 志保 村田 友佳 山下 康行
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
日本放射線腫瘍学会誌 (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.171-175, 2003

【目的】肺野の小結節の線量分布計算における散乱補正の有用性をファントムモデルにより検証する.<BR>【方法】肺野の結節を摸したファントムモデル (1×1×0.7cmおよび3×35×5cm) を作成し, 胸部ファントムに装着して撮影したCTデータをもとに線量分布計算装置にて4MVX線および10MvX線での線量分布をsuperposidon法 (散乱線に対する密度補正あり) および不均質補正ありのClarkson法で算出した. 同じファントムモデルでMarcuschamberおよびフィルム法で実際に線量を測定し, superposition法およびClarkson法で算出された照射野中心での推定線量と実測値の差異とX線のエネルギーおよび結節の大きさ毎に検討した. また, 線量分布図および結節平均線量についても大小の結節についてsuperposidon法およびClarkson法で各々算出し, 両者の比較を行って線量分布および結節平均線量の線量計算方法による差異を検討した.<BR>【結果】照射野中心推定線量と線量計よる実測線量との比較ではsuperposition法での計算結果と実測線量の差は5%以下と僅かであったのに対して, Clarkson法では実測線曇に対して小結節において7%(4MVX線) および32%(10MVX線), 大結節でも6%<BR>結簸の平均線量の比較ではCI訂kson法はsupeosition法での推定線量に比較して小結節では29%(4MVX線) および48%(10MVX線), 大結節でも12%(4MVX線) および13%(10MVX線) の過大線量評価 (いずれもp<0.001) を認めた.(4MVX線) および7%(10MVX線) の過大線量評価を認めた.<BR>【結語】肺野の小結節におけるsuperposition法による計算結果が信頼性の高いものであることが確認された. 特に10MVX線で1cm程度の肺野小結節に照射する場合には従来一般的に用いられている散乱線に対する密度補正を行わないclarkson法では実測値に対して32%の線量過大評価をしており, 注意が必要と思われた.
著者
小泉 雅彦 西山 謹司 山崎 秀哉 長谷川 義尚
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
日本放射線腫瘍学会誌 (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.157-163, 2004

頭頸部腫瘍にstereotactic radiotberapy (SRT), conformal radiotherapy (CRT) を用いた症例に対し, 唾液腺シンチを使って定量的評価をし, 唾液腺障害の軽減の効果について検討した. 対象は大阪府立成人病センターにて1999年9月-2002年9月にSRT, CRTを行った上咽頭癌7例, 中咽頭 (扁桃) 癌3例である. 年齢は17-71歳 (中間値48歳), 男性7人, 女性3人で, 左右全耳下腺へ約40Gyの通常外照射後, 30-36Gyのブースト照射を健側耳下腺を可及的に照射野から除外したSRTまたはCRTで行った. 放射線治療後8ヶ月以降に耳下腺シンチグラフィーを行い, 摂取率, 分泌率を測定した. 放射線治療前の頭頸部腫瘍患者18例をコントロールとして測定して, 平均摂取率, 分泌率は, それぞれ0.40%, 40%であった. 対象8例の耳下腺50%体積線量 (D50) は健側44.3±3.8 (39.2-49.1, 中央値44.6) Gy, 患側58.8±8.6 (47.3-70.5, 中央値60.8) Gyとなった. 放射線治療後の平均摂取率は健側0.44%, 患側0.47%と, 両側とも変化しなかった. 平均分泌率は健側11.0%, 患測39%であり, 両側とも低下したが, 患側が健側より有意に低くなった (p=0,023). D50と摂取率には相関はなかったが, 分泌率は負の相関を示した.D50が40Gyを超えても55Gy未満に留まった14耳下腺では分泌率は平均10%程度あり, 55Gy以上の6耳下腺で平均2%と著しい低下を示したのに対し分泌率をより保持していた. 頭頸部腫瘍に対しブースト照射としてSRT・CRTを用い耳下腺への照射線室を低減させ, 健側の唾液線分泌障害を若干軽減できた.