著者
梅本 滋
雑誌
東北海区水産研究所研究報告
巻号頁・発行日
no.5, pp.103-111, 1955-10

1.チクワの色を白く仕上げる目的で、チクワの表面をH2O2液で湿す処理を行う場合がある。このH2O2処理についてと、それがチクワに及ぼす影響とについて検討を行った。2.チクワ漂白の目的に使用されているH2O2の濃度は0.85~3.5%であった。3.漂白処理時にH2O2液の濃度の変化は僅かで、大体一定に保たれていた。これはH2O2液に入っていると考えられる安定剤の存在によるものであろう。4.H2O2処理によってチクワはその表面だけでなく、その内部も白くなるのが観察される。チクワ内部のH2O2の検出法を定めた。この方法を用いた結果、チクワ表面を湿したH2O2は次第にチクワ内部に滲透してゆくことを知った。5.漂白の目的で行われているH2O2処理は、チクワの保存性を増す効果があることを知った。6.H2O2処理によって、チクワの物理的触感がよくなるような感じをうける。物理的性状として、凹みの強度・破れの強度の測定を試みた。
著者
川崎 健
雑誌
東北海区水産研究所研究報告
巻号頁・発行日
no.10, pp.17-28, 1957-11

1.カツオの漁獲量の明治38年以降の統計を検討した。現在の漁獲量は釣漁法での限界に達していると考えられる。2.東北海区では昭和26年~31年の期間では、26年と31年が好漁年で、28年が不漁年であった。東北海区での漁獲量は、好漁年1,300万貫不漁年700万貫が大体の上下限であると思われる。3.3年魚の増重率および平均体重の年変動はかなり大きく、又好漁年には増重率も魚体も大きく不漁年には小さいという傾向がある。4.近年は昭和10年台に較べて来游量が減少していると考えられる。5.各年の3年魚の月別の漁獲尾数の推定を行った。その結果、3年魚の東北海区への投入はほとんど7月に行われ8月以降は添加が無く、漁獲のために存在量が減少して行くものと思われる。又一般的な減少曲線からのハズレから、昭和26年8月と31年7月は海況条件がよく、28年8月には悪かったと推定される。6.好漁年には漁場面積が増大し不漁年には減少する傾向がある。又単位漁場面積当りの漁獲量も好漁年(月)程大きい。
著者
堀田 秀之 小達 和子
雑誌
東北海区水産研究所研究報告
巻号頁・発行日
no.7, pp.60-69, 1956-03 (Released:2014-08-22)

1951年から1955年に亘って採集された約50標本1500尾のサンマの消化管を調査し、その食餌構成と摂餌行動について、次の様な知見が得られた。1.サンマの主なる餌はPlanktonic crustaceansで、稚魚・魚卵(主にカタクチイワシ)やSagittaが之に次いでおり、Phytoplanktonは消化管中には認められない。2.サンマの食性は幼魚期(体長約6cm)から固定し、幼魚から成魚に至る間に食性の変化が認められない。3.単位体重当りの摂餌量は体重の小さいものの方が一般に大きい傾向がある。4.サンマは産卵時期でも常に摂餌している。5.サンマの消化管内容物の季節的変化は、一般に春季(5月・6月)と秋季(10月・11月)にPlanktonic crustaceansの出現割合が高く、この時期には消化管の空虚なものは少ない。空虚な消化管の出現割合は海洋に於けるPlanktonの存在量と関連する。6.鈎頭虫類の1種の寄生虫が体長20cm以上のものに屡々見出される。この寄生率・寄生密度は餌料と関連を持つものと考えられる。7.サンマの索餌活動に日週期的変化が認められ、昼間から日没時にかけて盛んに摂餌し、夜間は摂餌しない様である。8.夜間棒受網と流網による漁獲物の摂餌量を比較すると、流網のものの方が多く、棒受網のものは消化管が殆んど空虚なものばかりである。