著者
小林 正秀 萩田 実
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.133-140, 2000-03-20
被引用文献数
15

京都府北部の5林分で,コナラとミズナラの枯損状況を調査したところ,コナラよりミズナラの枯損率が高く,枯損率は最初の被害が発生して3年目頃に最大となった。エタノールを用いた誘引トラップでカシノナガキクイムシを捕獲したところ,捕獲数も被害発生3年目頃に最大となった。しかし,本種はエタノールにはほとんど定位しないことが,α-ピネンや誘引剤なしのトラップ及び障壁トラップとの比較で判明した。ナラ樹に粘着トラップを巻き付けて捕獲したところ,飛翔は6月上旬〜10月下旬にみられ,飛翔時間は午前5時〜11時で,飛翔高度は0.5〜2.0mに多いことがわかった。さらに,前年に穿孔を受けたナラ樹に羽化トラップを被覆して調査したところ,羽化時期は6月上旬〜10月上旬であること,枯死木からの羽化は多いが,健全木からは少ないことがわかった。また,枯死木1m^3当りの羽化数は約3万頭で,1穿孔当りでは約20頭であった。割材調査では,枯死木1m^3当りの羽化数は約5万頭で,1穿孔当りでは約13頭であった。また,すべてのトラップ調査においで性比は雄に偏っていた。
著者
大園 享司 武田 博清
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.7-11, 2002-03-29
被引用文献数
1

培養系において15種19菌株(担子菌類(B)6種6菌株,クロサイワイタケ科子のう菌類(XA)4種7菌株,その他の子のう菌類(OA)5種6菌株)の分解を受けたブナ落葉の養分濃度(N,P,K,Ca,Mg)を測定した。実験に用いた菌株は京都府北東部の京都大学農学部附属芦生演習林において採取した。同地においてリクードラップにより採取したブナ落葉をオートクレーブ滅菌(120℃,20分)して素寒天培地の表面に置き,菌類を接種して2ヶ月間,20℃,暗黒下で培養した。培養後の落葉は重量減少率を測定後,養分濃度を測定した。分類群間で各元素濃度の平均値を比較したところ,N濃度はBとXAとの間で差はみられず,BでOAよりも高かった。P濃度はXAでB,OAよりも高かった。K,Ca濃度は分類群間で差はみられなかった。Mg濃度はBでXA,OAよりも低かった。この結果を,菌類が森林生態系での落葉分解にともなう養分動態に果たす役割という観点から考察した。
著者
西垣 眞太郎 井上 牧雄 西村 徳義
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
no.7, pp.117-120, 1998-03-25
被引用文献数
6

鳥取県において,1994年〜1996年の3年間,ナラ類枯損状況の分布調査を行った結果,1994年では枯損地域は鳥取県の東部海岸沿いの4市町村に限定されていたが,1996年には岩美町でそれまでの単木被害から集団枯損に変化し,単木被害地域も地域の南側の郡家町に拡大した。これらの被害木にはカシノナガキクイムシの穿入が認められたが,枯死した個体には集中的な穿入孔が認められた。被害地内に2箇所の調査プロットを設けてナラ類の枯死状況を調査したプロットNo.1でコナラよりミズナラのほうが枯死木が多いこと,枯死したミズナラでは肥大成長が大きいことが明らかになった。しかし,No.2ではこれらの関係は明らかでなく,胸高直径での比較より根元径の比較が必要と考えられた。材含水率は個体によって差があり,また,測定時の気象条件によって測定値が変動するが,当初高い個体は高く推移し,低い個体は低く推移した。枯死木の材含水率の推移は健全木10本の測定値の幅の中にあり,材含水率の時間的変化は枯死に至る経過の指標にはならなかった。
著者
稲垣 善之 深田 英久 倉本 惠生 三浦 覚
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.69-75, 2005-10-31

高知県の3地域(高知,大豊,津野)のヒノキ8林分において,落葉の季節性と窒素利用様式の関係を明らかにした。落葉が年間量の10%に達する開始時期(T_<10>)は,9月7日〜10月22日,50%に達する落葉時期(T_<50>)は,10月25日〜1月3日,10%から90%に達するまでの期間は30〜189日であった。これらのヒノキ林分における年平均気温は9.6〜16.7℃であったが,年平均気温と落葉の季節性には有意な相関関係はみられなかった。一方,T_<10>とリターフォールの窒素濃度には有意な負の相関関係がみられた。窒素の資源の乏しい環境では,ヒノキは長い間葉をつけるため生育期間が長くなると考えられた。T_<50>は樹高成長の指標が小さいほど早い傾向がみられた。樹高成長の小さい林分では水分ストレスが強いために落葉時期が早いと考えられた。以上の結果,ヒノキの落葉は水分ストレスが強いほど早く,窒素欠乏によって遅くなる傾向が示唆された。
著者
森 章 樋口 良彦 武田 博清
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.13-17, 2000-09-25
被引用文献数
6

DGPS(ディファレンシャルGPS)の林内での測位精度を調べ,様々な林分間で比較した。DGPSにより測位した点は,SA(選択利用性)の影響のもとで,測位の平均点から1m円内にほとんどの点が含まれた。また,測位誤差は,樹幹に近づくほど大きくなった。測位誤差の林分による違いは,落葉済みの落葉広葉樹林内で,林外と誤差に有意な差はなかったが,常緑樹林内は,広葉樹林,針葉樹林ともに,林外より誤差が有意に大きくなった。これらの結果,林内でDGPSを使用する際には,できるだけ樹幹よりDGPS受信機を離して測位を行うこと,落葉広葉樹のある林分では落葉済みの冬季に測位を行うこと,常緑樹林内では上層の開空度の高い位置で測位を行うことで精度が高まると考えられた。さらに,実際の森林でのDGPSの使用方法として,林内の毎木調査の例を挙げると,できるだけ樹幹より離れており,かつ,上層の開けた位置にDGPS受信機を設置し,そこからレーザーレンジファインダーなどでオフセットして,測位を行うことで,精度が高まると考えられた。