著者
薛 進軍
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会会報 (ISSN:18839797)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.83-90, 1998
被引用文献数
1

中国とアメリカとは、1979年以来経済交流や貿易通商など、両国の経済関係が緊密になり、国際貿易関係は十数年間順調であったが、90年代に入って、貿易摩擦が頻繁に発生するようになった。この問題の一部は貿易統計システムの相違により生じている。つまり、(1)米、日諸国は原産地別で貿易額を集計しているが、中国は消費国別で輸出を集計している。そのため、第三国経由の再輸出入が第三国を最終仕向国として集計されている。(2)東アジアの貿易構造の変換によって、対米貿易黒字の原因であった輸出製品の生産拠点は香港・台湾から中国大陸へ移転したので、対米黒字の大部分が中国に転嫁された。(3)第三国経由時生じた貿易の付加価値は中国側は計上してないが、米国側はこれを中国に計上している。(4)中国がFOBとCIF価格で計上している輸出入金額は米国、日本の計上金額とは差がある。この問題の解消には、中国が世界通商の共通ルールと統計のシステムに慣れることが緊急的な課題であり、先進国からの協力も必要と思われる。しかし、貿易統計を整合させれば、米国が中国の第一貿易相手国になるので、中米、中日、中国大陸と香港間の経済・貿易関係の重要性の一層の再認識が必要となると思われる。