著者
志田 仁完
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.2_51-2_70, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
35

本稿は,2015年第4四半期に実施された企業調査の結果に基づき,対ロシア経済制裁が企業経営に与える影響を検証した.分析は主に次の点を明らかにしている.第1に,企業経営幹部は,経済制裁が自社の経営に与える負の影響を,世界金融危機や欧州ソブリン危機と同程度において深刻な問題として評価している.第2に,金融危機の影響とは異なり,経済制裁の影響の評価には地域差が認められない.
著者
梶谷 懐
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1_1-1_13, 2012 (Released:2012-03-06)
参考文献数
26

本稿の目的は,「非先進国(発展途上国)」の政治経済モデルとして最も代表的なものである,「開発体制国家」モデルをベンチマークとして,中国経済を「非先進国経済」の一つとして類型化を行うことである.市場経済の下で高成長を遂げる中国は,従来の「開発体制国家」モデルといくつかの前提を共有しながらも,その産業構造や技術進歩のパターン,さらには国家と経済活動との関係など,重要な点で大きな違いを見せている.本稿では,そのような中国経済の「型」を,「分散型の開発体制」と名付け,国家と社会との関係,市場競争の歴史的な特性,グローバル経済における位置づけなど,いくつかの観点から検討を行う.
著者
栖原 学
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1_17-1_28, 2014 (Released:2014-03-29)
参考文献数
26

19世紀後半から経済成長を加速させたロシアは,二度にわたる急速な工業化の期間を経て,1960年には西欧先進国の発展レベルに接近した.長期にわたるロシア・ソ連経済のキャッチアップの過程は,サイモン・クズネッツのいう「近代経済成長」の一例といえよう.しかし,1960年頃から経済成長と技術革新の主要推進力としての「上からの圧力」を失ったソ連は,目標とした先進国の水準に到達することなく解体に至り,その「近代経済成長」は挫折に終わることとなった.
著者
ジェラール・ロラン
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.2_1-2_21, 2019

<p>本稿は,古代の時代から2つの異なる種類の制度システムが存在していたことを示す証拠を提示する.1つは,古代中国,古代エジプト,インカ帝国などの領域国家に存在した中央集権的計画システムに似た制度システムである.もう1つは,地中海諸国だけでなく世界中の都市国家に存在し,私的所有権が保護された,強い市場制度をもつシステムである.本稿では,このような異なる制度クラスターが古代から存在したことを示す新しいデータベースを概観し,それらの関係について分析する.</p>
著者
中村 靖
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1_29-1_41, 2014 (Released:2014-03-29)
参考文献数
50

市場を排除したソ連経済は不換通貨管理メカニズムを欠いていた.国債発行を軸とする1930年代型資金循環は,その資金利用効率の低さから家計預金-銀行貸付へ重心を移した.しかし,通貨管理には企業に債務履行を求める以上の変化はなく,資金利用効率は改善されなかった.そこで生じていたと考えられる生産性課題未達成と預金通貨・貸付増大の併存状態をモデルで再現した.
著者
服部 倫卓
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.2_21-2_32, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
28

ウクライナ・ロシア危機を解明するための新たな分析視角として,両国の基幹産業である鉄鋼業を取り上げ,図表を駆使し比較検討する.世界の鉄鋼業界では,中国発の生産過剰・価格軟化が生じている.近代化が遅れ,コスト面での優位も失いつつあるロシア・ウクライナ鉄鋼業の立ち位置は,困難となっている.とりわけ,技術力が世界最低水準の上に,集積地ドンバスで内戦が起きたウクライナ鉄鋼業の行く末は,悲観せざるをえない.
著者
長友 謙治
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.2_23-2_35, 2016 (Released:2016-06-28)
参考文献数
28

ロシアの農業生産は,1990年代の市場経済移行期に劇的に縮小したが,2000年代以降回復が進んだ.回復の中心となった自然条件や地理的条件に恵まれた地域では,農業組織の法人形態の農業生産協同組合から有限責任会社や株式会社への転換と,農業投資の拡大が同時並行的に進んでいた.こうした現象が生じたのは,その背後で,アグロホールディングに代表されるような,企業家による農業組織の所有と経営の集中が進行していたためと考えられる.
著者
盛田 常夫
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.2_1-2_10, 2009 (Released:2011-01-21)
参考文献数
12

体制転換(移行)によって経済学の存在意義が問われている。社会主義崩壊が計画経済崩壊であるとしたら,経済学は国民経済の計画化を支える科学たり得なかったことを意味する。「不足の経済学」を打ち立てたコルナイ経済学は,いったい何を分析し,どのような理論成果を生み出したのだろうか。経済学ははたして科学か,レトリックか,あるいは論理学か,応用数学の一分野か。また,体制転換過程におけるコルナイの政策提案を批判的に検討する。
著者
五十嵐 徳子
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.17-34, 2009

本稿では,約70年間同じソビエト社会にあった,ロシア,グルジア,ウズベキスタン,そしてロシア国内のタタルスタンのジェンダーの状況を明らかにするとともに,今後のジェンダーの動向を予測している。分析に際しては,女性の就労と役割分担,そしてそれらに影響を与えているであろう各社会の有する規範に焦点を当て,「旧ソ連の共和国で大量の専業主婦は誕生するのか」という課題について考察を行っている。
著者
中兼 和津次
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.2_85-2_98, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
25

現代中国政治・社会の統治構造の柱が,1)権力主義(権力の維持,拡大を最高目的とする思想と政策),2)エリート主義(意思決定は少数の選ばれた人間・集団によってなされるべきだとする思想と政策),そして3)実用主義(目的のためには手段を択ばないという思想と政策)という3つの大きな原理だと私は考えるが,それは空想から現実へと社会主義像が変転する中で生まれ,確立してきた原理であった.そのことを立証するために,1)ロシア革命とマルクス・エンゲルス,レーニンの空想的社会主義構想,2)スターリンによって実施されたソ連型社会主義経済の実態,3)中国に輸入されたソ連型モデルと毛沢東による修正,4)毛沢東の空想的社会主義理念とそれがもたらした結末,5)鄧小平による現実的経済体制の選択といった,社会主義像が空想から現実へと転換していく一連の過程とその結果について考察する.
著者
佐藤 隆広 福味 敦
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1_17-1_29, 2019 (Released:2019-03-08)
参考文献数
20

本研究は,石油価格の上昇がもたらすマクロ経済への影響を,石油輸出国であるロシアと石油輸入国である中国とインドのユーラシア地域大国3カ国で定量的に比較した.ベクトル自己回帰(VAR)モデルを用いた分析結果によると,石油価格ショックと石油への投機的需要ショックの2つのケースで,中国とロシアで対照的な結果が得られた.すなわち,中国ではこれらのショックは物価を高めるのに対して,ロシアでは生産を拡大させる.また,世界景気のプラスのショックを意味する石油需要ショックは,中国においてもロシアにおいても生産を拡大させる.ロシアでは,それはさらに物価も高める.これに対して,インドでは石油ショックについて統計的に有意な結果が得られなかった.
著者
石郷岡 建
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.2_33-2_50, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
8

2003年に始まったウクライナ危機の背景には何があるのか? 大統領選挙を中心とした投票行動(政治的意思表示)から分析すると,独立以降の選挙では,常に,東西対立の問題が底流に流れており,住民の間のアイデンティティの違い,特に,使用言語の違いが大きな意味を持っている.国家統一のためには,住民のアイデンティティの統一が急務だが,現状では,その道筋は示されていない.ウクライナの将来は厳しい情勢にある.
著者
中兼 和津次
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.2_85-2_98, 2018

<p>現代中国政治・社会の統治構造の柱が,1)権力主義(権力の維持,拡大を最高目的とする思想と政策),2)エリート主義(意思決定は少数の選ばれた人間・集団によってなされるべきだとする思想と政策),そして3)実用主義(目的のためには手段を択ばないという思想と政策)という3つの大きな原理だと私は考えるが,それは空想から現実へと社会主義像が変転する中で生まれ,確立してきた原理であった.そのことを立証するために,1)ロシア革命とマルクス・エンゲルス,レーニンの空想的社会主義構想,2)スターリンによって実施されたソ連型社会主義経済の実態,3)中国に輸入されたソ連型モデルと毛沢東による修正,4)毛沢東の空想的社会主義理念とそれがもたらした結末,5)鄧小平による現実的経済体制の選択といった,社会主義像が空想から現実へと転換していく一連の過程とその結果について考察する.</p>
著者
三宅 芳夫
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1_9-1_17, 2017 (Released:2017-05-17)
参考文献数
25

本稿は,I.ウォーラーステインやG.アリギなどの「世界システム」論のアプローチを批判的に援用しながら,「長期」の時間的スケールにおいて「自由主義」と「民主主義」の提携レジームを考察する.その際,20世紀の「30年戦争 1914-1945」における「自由主義」と「民主主義」の「歴史的妥協」,そして1970年代以降の「新自由主義グローバリズム」的再編の下での「妥協」の解体,という論点を強調する.
著者
吉原 直毅
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1_49-1_61, 2017 (Released:2017-05-17)
参考文献数
21

資本主義経済システムの原理的安定性は,拡大的資本循環の長期的継起性に関わり,「利潤率低下法則」問題として論じられる.本論では,マルクスの利潤率低下法則論への置塩定理(1961)による批判,及び同定理への近年の批判的議論を概観しつつ,今後の資本主義経済システムの継起性は,新たな資本の拡大的循環を確立させる技術革新に依拠すると同時に,それは人類の持続可能な福祉的自由の発展の方向性とは相容れない可能性を指摘する.
著者
吉井 昌彦
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.2_51-2_57, 2010 (Released:2011-02-18)
参考文献数
14

中・東欧諸国における政府-企業間関係は,EU 加盟交渉の中で,EU の競争・産業政策に準拠することが求められたため,国家支援,投資優遇措置等はむしろ既加盟国を下回る水準にまで低下してきた.もちろん,政府と企業の間に汚職などの非公式な関係が残っていることは否定できないが,これらの非公式な関係は,欧州委員会の政策により矯正され,中・東欧諸国の政府-企業間関係は,旧ソ連諸国と比べて,希薄なものとなるであろう.
著者
山田鋭夫
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, 2007-01