著者
山中 成元 上田 栄一 藤井 吉隆
出版者
滋賀県農業技術振興センター
雑誌
滋賀県農業技術振興センター研究報告 (ISSN:18814735)
巻号頁・発行日
no.47, pp.51-60, 2008-03
被引用文献数
1

野生動物が里に出没しにくい環境に改変する方法として、森林と農地との境界に和牛等の放牧を行って緩衝地帯を設ける「放牧ゾーニング」について、イノシシの農作物被害防止や農村活性化効果を検討した。1)木之本町小山地区において、森林に接する耕作放棄田2haに和牛等の放牧を行ったところ、イノシシの農地への侵入防止効果が認められた。2)放牧ゾーニングによるイノシシの行動状況は、導入した初期の3年間では放牧田周辺をほとんど行動域としていなかったが、その後の3年間では放牧田付近を集中して利用していた。3)「放牧ゾーニング」は、イノシシ被害防止効果のほかにも、営農意欲の復活、景観形成、情操教育等の集落を活性化させる多様な効果が認められた。2)放牧地に牧草、隣接する農地に麦または大豆を作付け集団転作を実施したことにより、集落の年間所得が約170万円増加した。