- 著者
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古川 顕
Akira Furukawa
- 出版者
- 甲南大学経済学会
- 雑誌
- 甲南経済学論集 = Konan economic papers (ISSN:04524187)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.3・4, pp.45-91, 2020-03-20
古代中国, なかでも春秋戦国時代は, 中国の長い歴史の中でも注目すべき激動の時代であった。春秋戦国時代の大きな特色の一つは, 従来の青銅器製造技術が高度に発達して鉄製農具が出現し, 牛を使って畑を耕す牛耕農業が出現したことである。牛耕農業の出現・普及は華北の農業生産力を飛躍的に発展させ, その農業生産力の発展を土台にして商取引の発展を促した。商取引の発展は, 商取引を円滑にする度量衡, 貨幣, 文字の全国的な統一をもたらした。古代中国の貨幣の起源を考察・検討するときにしばしば 着するのは貝殻, とりわけ子安貝である。子安貝は古来より世界的に注目されてきた貝殻であるが, なかでも古代中国の殷・周時代や春秋戦国時代などに貨幣として使用されたとされている。子安貝は, いわゆる貝貨の典型的な事例である。そうした古代中国の貨幣の発展を対象として,「近代考古学の父」と称される浜田耕作の, 古代中国の貨幣の起源を子安貝に求める独創的な考え方がある。