著者
溝口 聡 So Mizoguchi
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.177-194, 2021-09

本稿は、アジア系初の下院議員となったダリップ・シン・サウンドの前半生に焦点をあてながら、アメリカにおけるインド移民史の第一期にあたる20世紀前半までのインド系アメリカ人の歴史を考察するものである。先行研究では、アメリカにおけるアジア系政治家の先駆者であるサウンドについて、モデル・マイノリティ論や米ソ冷戦下の人種政治との関係性の中で評価される傾向が強かった。対する本稿は、20世紀前半のアメリカのインド系コミュニティにとって、最重要課題であるインド独立と市民権獲得という二つの政治問題を軸にサウンドの前半生を論じ、サウンドも制定にも携わったルース=セラー法を、移民排斥の余波を受け危機に瀕していたインド系コミュニティの存続と戦後のアメリカ社会で活躍するインド系の人材輩出という側面で大きな役割を果たしたインド系アメリカ人の歴史のメルクマールとして、再評価を行った。