著者
溝口 聡 So Mizoguchi
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.163-180, 2020-09

本稿はレーガン政権のAIDS政策の問題点を内政と外交の二つの視点から明らかにするものである。同政権のAIDS対策への評価は、概して保守とリベラルという国内政治の文脈から論じられてきた。大統領には、政権の支持基盤である保守派への政治的な配慮からCDCやNIHが推奨する性教育や大規模な予算を組んだ対策に対し、消極的な姿勢を続け、国内のAIDS被害を拡大させたとの厳しい評価が下されてきた。本稿はこうした国内での政権の対応の悪さが、過剰な移民規制やアメリカの国際的信用を貶めるため、AIDSを利用したソ連のプロパガンダの信憑性を高めるという悪循環を生んだことを明らかにした。すなわち、レーガンの消極的な対応は、同性愛者やアフリカ系アメリカ人コミュニティ内のAIDSによる社会的偏見に最も苦しめられた人々の中で、AIDSはアメリカ政府が製造した細菌兵器であるとの偽情報を受け入れる隙を作ったのである。
著者
溝口 聡 So Mizoguchi
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.177-194, 2021-09

本稿は、アジア系初の下院議員となったダリップ・シン・サウンドの前半生に焦点をあてながら、アメリカにおけるインド移民史の第一期にあたる20世紀前半までのインド系アメリカ人の歴史を考察するものである。先行研究では、アメリカにおけるアジア系政治家の先駆者であるサウンドについて、モデル・マイノリティ論や米ソ冷戦下の人種政治との関係性の中で評価される傾向が強かった。対する本稿は、20世紀前半のアメリカのインド系コミュニティにとって、最重要課題であるインド独立と市民権獲得という二つの政治問題を軸にサウンドの前半生を論じ、サウンドも制定にも携わったルース=セラー法を、移民排斥の余波を受け危機に瀕していたインド系コミュニティの存続と戦後のアメリカ社会で活躍するインド系の人材輩出という側面で大きな役割を果たしたインド系アメリカ人の歴史のメルクマールとして、再評価を行った。