著者
藤田 知子
出版者
神田外語大学
雑誌
神田外語大学紀要 (ISSN:09175989)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.157-183, 2008-03

本稿は現代日本語の接頭辞「カタ(片)-」の意味と使用条件を明らかにする試みである.「カタ-」は語基Xと結合し,(a)「二にして一」なるXの一方(「カタ目をとじて」),(b)「二にして一」なるXの非在の一方(「カタ目の男」)を指示する.これらは印欧語における双数(dual)と関連が強く,指示しないもう一方の存在を常に喚起する用法である.さらに「カタ時」「カタ田舎」のように双数との関連がうすい用法がある.具体例の分析を通して「カタ-」の多義性,差別的使用,文字表記について考察する.