著者
寺尾 和一 吉田 光宏 相見 有理 石田 衛 濱﨑 一 水谷 尚史 中西 浩隆 中林 規容
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.426-431, 2023 (Released:2023-09-25)
参考文献数
11

生来健康な34歳男性.発熱にて精査中,頭痛を主訴に左脳出血を発症し,精査加療目的に入院した.血液培養からLactobacillus rhamnosusが同定され,心臓超音波検査にて大動脈弁に疣贅を指摘されたため,感染性心内膜炎と診断された.本患者は1日推奨量の10倍以上のヨーグルト摂取を行っており,これが侵入門戸と推定された.抗生物質による加療を開始していたにもかかわらず,右脳出血を続発した.血腫内に脳動脈瘤が認められ,保存加療中に脳動脈瘤が経時的に増大したため,感染性動脈瘤と診断し,開頭脳動脈瘤切除術を施行した.発症から33日後に大動脈弁置換術が施行され,その後リハビリテーション目的に転院した.ヨーグルト製品の過剰摂取によるLactobacillus菌血症は,少ないながらも報告があり,本症例のように感染性心内膜炎を発症し,細菌性脳動脈瘤の形成,破裂に至る可能性も考慮すべきである.
著者
吉川 亮平 小原 香耶 三浦 士郎 小林 信周 吉田 光宏
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.381-386, 2020 (Released:2020-07-01)
参考文献数
27

認知症高齢者は認知機能の障害とそれに伴う行動心理症状により転倒リスクが高く、転倒による骨折が患者の生活の質のみならず、認知症進行への関与が予想されることからも、骨量の評価は極めて重要と考えられる。本研究では、独立行政法人国立病院機構北陸病院の認知症外来受診者における骨量の実態を調査するとともに、栄養状態等との関連性について検討を行った。骨量の評価には超音波骨密度測定装置を用い、踵骨部における音響的骨評価値(OSI)を測定した。対象者の平均OSIは、男女ともに若年成人平均値よりも著しい低値を示した。OSIを目的変数とした重回帰分析の結果、男性ではBMIとヘモグロビン濃度、女性では年齢、赤血球数、手段的日常生活動作が寄与因子として認められた。認知症外来受診者のOSIが低値であることを認め、骨粗鬆症対策や転倒予防の重要性が示唆された。また、男性は骨量と栄養状態に関連性を認めたが、女性は外来受診時の骨量と栄養状態に顕著な関連性は見られず、若年時からの一次予防が重要であると考えられた。
著者
三宅 康博 永谷 幸則 吉田 光宏 林崎 規託 荻津 透 大西 純一 鳥養 映子
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

透過ミュオン顕微鏡に用いる超低速ミュオンに厚い試料への透過能をもたせるための再加速装置である5MeVミュオンサイクロトロンが完成した。本年度、サイクロトロンの主磁石を作成するとともに、サーチコイルを用いた超精密(10(-5)精度)かつ高勾配(10%/cm)の磁場を計測可能な3次元磁場測定装置を開発し、これらを用いて精密磁場測定、磁場計算と磁極調整(シミング)をくりかえし、目標とする最大0.5T強度で10(-5)精度の等時性磁場の形成に成功した。磁場測定装置の開発では、低膨張ガラス立方体にコイルを巻き、超低ドリフトアンプ、24bitADC、14bitロータリーエンコーダー、FPGA処理装置を組み合わせ、必要な精度を得た。また、サイクロトロンに高安定な108MHzと324MHzの電磁波(RF)を供給する発振器、プリアンプ、パワーアンプ等も開発した。GPS原子時計に同期した源発信をPLLにより上記周波数に変換し、複素変調器、複素復調器、ADC、DACとFPGAを組み合わせたフルデジタルなRF制御系の開発も進めた。並行して、透過ミュオン顕微鏡に用いる超伝導対物レンズの超伝導コイルのヘリウム冷却・起動試験を実施し、目論見通りの磁場(最高4.2T)分布が得られる事を確認した。また、ミュオン回折実験のデーター解析も進めた。
著者
横川 正美 山田 正仁 菅野 圭子 柚木 颯偲 堂本 千晶 吉田 光宏 浜口 毅 高橋 和也 岩佐 和夫 駒井 清暢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P3233, 2009

【目的】認知症予防のための方法は種々報告されており、運動に関しては有酸素運動が効果的であるとされているが一定の見解には至っていない.本研究では地域住民を対象に有酸素運動を主体とした運動機能プログラムを実施し、その効果について同時期に行われた認知機能プログラムと比較検討した.<BR><BR>【方法】前年度に地域で実施された脳健診の受診者から、脳老化関連疾患の疑われる者および介入法参加に支障をきたすような身体疾患のある者を除き、臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating; CDR)が0または0.5にあたる健常者または軽度認知障害者379名に本研究への参加を募った.参加への同意の得られた36名のうち、介入前後の評価を実施できた29名を本研究の対象とした.介入法はプログラムを2つ設け、参加者を無作為に振り分けた.一つは認知機能プログラム(n=12)で、認知症の前段階で低下しやすいと考えられている実行機能を重点的に高める内容として、A.ゲームやパズル、B.地域の地図作り、C.自助具技術の習得を行った.もう一つは有酸素運動を主体とした運動機能プログラム(n=17)で、A.体調確認、B.テレビ体操(ウォーミングアップ)、C.ウォーキング、D.柔軟体操(クールダウン)を行った.2つのプログラムはどちらも週1回約1時間で合計14回、4ヶ月間にわたって実施した.認知機能プログラムはAからCをそれぞれ4回程度ずつ費やして行い、運動機能プログラムはAからDを毎回行った.対象者には介入前後に認知機能検査としてファイブ・コグを施行した.<BR><BR>【結果】参加者の平均年齢は72.2±7.1歳、平均教育年数は10.4±2.3年であった.2つのプログラムの間で対象者の年齢、教育歴による差はみられなかった.参加者の年齢層や日常的な活動の幅を考慮して、運動プログラムでのウォーキングは10分より開始し、6回目より15分に延長した.実施期間中に体調不良を訴えた者はなかった.介入前後の認知機能検査において、認知機能プログラムでは「手がかり再生課題」が12.6±5.6点から17.0±5.7点へ、「動物名想起課題(言語流暢性課題)」が12.8±4.0点から16.4±2.9点へとそれぞれ有意に改善した(いずれもp<0.01).運動機能プログラムでは「手がかり再生課題」のみ、11.5±5.3点から16.2±5.3点へと有意に改善した(p<0.01).<BR><BR>【考察】認知機能検査において、両プログラムで「手がかり再生課題」が改善し、記憶機能の改善が示唆された.アルツハイマー病では初期に記憶機能が低下するとされている.記憶機能の改善が示唆された今回のプログラムはどちらも予防プログラムとして効果的であることが考えられた.その一方で運動機能プログラムでは認知機能プログラムで示された言語流暢性課題の改善は得られなかった.今後は運動内容の再考や、さらに対象者が今回のプログラムで獲得した体力を維持し、長期的に認知症予防に取り組めるような支援方法の検討が必要と考える.
著者
植竹 智 山崎 高幸 下村 浩一郎 吉田 光宏 吉村 太彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

本研究は,レプトンのみからなる水素様純レプトン原子:ミューオニウム (以下Mu)の精密分光により,電弱統一理論の精密検証および新物理探索を行うことを目標とする.具体的には,(1) Muの1S-2S間遷移周波数の精密二光子レーザー分光;(2) 基底状態超微細分裂の精密マイクロ波分光;(3) 荷電束縛系のエネルギー準位に電弱効果が及ぼす影響を摂動2次の項まで取り入れた高精度理論計算;の3つを行う.実験精度を先行研究より大幅に向上させ,基礎物理定数であるミュー粒子質量の決定精度を大きく向上させると共に,理論と実験の比較を通じて電弱統一理論の精密検証と新物理探索を目指す.
著者
横川 正美 菅野 圭子 柚木 颯偲 堂本 千晶 吉田 光宏 浜口 毅 柳瀬 大亮 岩佐 和夫 駒井 清暢 山田 正仁
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E3O2227-E3O2227, 2010

【目的】昨年の日本理学療法学術大会において、地域住民を対象に認知症予防として実施した認知機能プログラムと運動機能プログラムの効果を調べたところ、前者のみならず、後者のプログラムでも記憶機能の改善が示唆されたことを報告した。本研究では、同様のプログラムを再度実施し、プログラムに参加していない対照群との比較を行った。<BR>【方法】一昨年度および前年度に地域で実施された脳健診の受診者から、明らかな脳疾患を有する者、および臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating; CDR)が1以上のものを除いた806名に研究参加を募った。参加への同意が得られた37名のうち、介入前後の評価を実施できた31名を介入法の対象者とした。対照群として、本研究の趣旨を説明し協力の同意が得られたグループデイ参加者20名のうち、介入群と同時期に評価を実施できた13名を対象者とした。グループデイは概ね65歳以上で、週1回以上自主的に運営し活動するグループであり、本研究の介入法には参加していない。介入法では、参加者を無作為に2つのプログラムのうち、次のいずれかに振り分けた。一つは認知プログラム(n=17)で認知症の前段階で低下しやすいと考えられている実行機能を重点的に高める内容であり、具体的には旅行の計画立案と実施を行った。もう一つは運動プログラム(n=14)で認知機能に効果的とされる有酸素運動を主体としており、体調確認の後、準備運動、ウォーキング(10-15分)、柔軟体操を行った。2つのプログラムはどちらも週1回約1時間、合計8回実施した。介入法参加者と対照群には介入前後に認知機能検査としてファイブ・コグを施行した。<BR>【説明と同意】参加者に本研究の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。本研究は所属する機関の医学倫理委員会の承認を得た。<BR>【結果】参加者の平均年齢は72.8±4.3歳、平均教育年数は10.0±2.0年であった。認知プログラム、運動プログラム、対照群の間で対象者の年齢、教育歴による差はみられなかった。ファイブ・コグの下位項目(運動、注意、記憶、視空間認知、言語流暢性、思考)の各評価得点について、2つのプログラムと対照群のうち、どれに参加したかという「プログラム」因子と、参加前か参加後かという「時間」因子による二元配置分散分析を行ったところ、交互作用が認められた項目はなかった。次に参加前、参加後の各評価得点をプログラム間で多重比較したところ、有意差が認められた項目はなかった。各プログラム内での多重比較では、認知プログラムにおいて、運動(22.4±5.6点→24.8±6.3点; p<0.05)と記憶(13.4±6.5点→17.1±6.1点; p<0.01)の得点が参加後、有意に改善した。運動プログラムにおいても同じく運動(19.4±6.5点→22.7±6.4点; p<0.01)と記憶(12.4±7.3点→15.6±5.7点; p<0.05)の得点が参加後、有意に改善した。対照群では、参加前後で有意に変化した項目はなかった。<BR>【考察】対照群では認知機能検査において有意な改善が認められた項目がなかったのに対し、認知プログラムと運動プログラムでは記憶の項目が改善した。2つのプログラムは昨年も同様の結果が得られている。プログラム間で改善した認知機能に差異がみられる傾向にあるが、どちらのプログラムも有効性が示唆されたことから予防事業で用いる場合に効果が期待できると考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】運動療法を用いた認知症予防の方法を提案するためのエビデンスを蓄積する。
著者
平田 雄一 宮本 直樹 清水 森人 吉田 光宏 平本 和夫 市川 芳明 金子 周史 篠川 毅 平岡 真寛 白土 博樹
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.238-246, 2014 (Released:2015-03-14)
参考文献数
14

がんの放射線治療においては患者の呼吸等にともなって放射線の照射中に患部の位置が変化する可能性がある。放射線の患部への照射効果を向上させるとともに、周辺の正常部位へのダメージを最小化するために、患部の3次元的な位置の時間的な変化を考慮した4次元放射線治療が最近日本で開発され治療効果を上げている。この時間軸を付加した4次元放射線治療を実現するシステムの安全性に関する技術的要件を盛り込んだ規格を日本から国際電気標準会議(IEC)に提案した。理由は、IECの国際標準は、各国の規制当局によって引用されると、強制力を有するようになるため、IECにおける国際標準化活動は、4次元放射線治療システムの確固とした安全性担保のために非常に効果的であるためである。この論文は、今後さらに需要が増す4次元放射線治療システムに関する国際標準化の戦略について分析した内容をまとめたものである。戦略の要は、4次元放射線治療システムの安全性に関する技術的要件の国際標準化に焦点を絞り、臨床的視点を盛り込む形で、幅広い分野の専門家の意見を結集して国際的な合意形成を図ることである。今後4次元放射線治療を一層普及させるために、このような戦略にもとづいて、4次元放射線治療システムを構成する個別装置に関する既存規格の改訂に加えて、4次元放射線治療システム全体についてシステムとしての安全性評価を行ったうえで、新しい規格の作成を推進する。
著者
中西 裕二 白川 琢磨 末成 道男 島村 泰則 仲川 裕里 謝 茘 吉田 光宏 李 鎮栄 聶 莉莉
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、日本の文化人類学会において検討される機会が少なかった、自社会研究としての文化人類学(Home Anthropology)の可能性を探るものである。研究は1)理論研究、2)東アジアにおけるHome Anthropologyの位置づけに関する比較研究、3)日本における現地調査研究を軸に進められた。これらの研究成果は以下の通りである。1)文化人類学を異文化理解の学と規定しても、それを他者性の理解という枠組みで把握する限り、Home Anthropologyは一般人類学に大きく貢献可能な学と言える。とくに自社会をフィールドとした文化人類学的研究は、従来の、海外をフィールドとした文化人類学的研究と比べ、他者との関係性がつねに問われる研究領域である。従って、他者性と他者理解を試みる文化人類学において、自社会研究の文化人類学は有益な理論的示唆を与えるものである。2)東アジア地域のHome Anthropologyは、それぞれの国家の近代史との関係の中で生成されている。従って東アジアにおけるHome Anthropologyは、各国により相対的な学問領域とも言え、それを一概に「東アジアのHome Anthropology」と範疇化することには無理がある。3)日本におけるHome Anthrologyは、日本文化研究という近代の枠組み、そして学のイデオロギー性を明らかにするために、非常に有効な手段と言える。