- 著者
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馬場 宏二
- 出版者
- 大東文化大学
- 雑誌
- 経済研究研究報告 (ISSN:09164987)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.91-109, 2007-03
経済学における富の概念が、重商主義学説から古典派経済学に至るにつれて、貨幣素材としての貴金属から各種使用価値の堆積へと移ってゆく過程を追う。むろんさほど斬新な試みではない。しかも、富概念の発展と唱えたくとも本質的には変遷であり、学説の系譜と控えようとしても継承関係を明示できない場合が多い。作業としては、諸説の時間的順序に従った羅列だと自称するしかない。それでもこれは、ペティからスミスやリカードに至る古典派経済学形成過程、未だに明確な図式化をできない過程の一側面である。そして、富概念と価値概念がいわば表裏の関係にあるところから、古典派における価値論成立史を、裏面から照射する手がかりにもなる。その程度の意味は持つであろう。