著者
水村 典弘
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第85集 日本的ものづくり経営パラダイムを超えて (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F23-1-F23-10, 2015 (Released:2019-09-25)

企業倫理の基盤となる制度の実効性を高めるためには,意図せぬ不正に走る人の心理現象と心理プロセスを分析して,倫理諸制度の基本設計や運用の一部に修正パッチを当てるか,さもなければ制度の全体を抜本的に見直す必要がある。では,なぜ人は無自覚的に不正を働き,時として悪事に手を染めるのか。現場で起きた「倫理の失敗」の数々を検証し,組織人の意図せぬ不正とその背後要因にスポットライトを当てて概括的な整理を試みたのが「行動ビジネス倫理」である。本稿は,ビジネス倫理学の領域で推奨される「倫理的な意思決定に向けたフレームワーク」とその脆弱性に焦点を当てた「行動ビジネス倫理」の分析視覚を明らかにしたうえで,2013年10月に株式会社阪急阪神ホテルズで発覚したメニュー表示問題の詳細について,関連省庁や「阪急阪神ホテルズにおけるメニュー表示の適正化に関する第三者委員会」が公表した調査報告書をもとに検証する。
著者
榊原 一也
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第85集 日本的ものづくり経営パラダイムを超えて (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F55-1-F55-8, 2015 (Released:2019-09-25)

従来の撤退戦略は,主に事業ポートフォリオ理論に依拠し,衰退段階に至った事業のキャッシュを再配分するという点に重きが置かれていた。だが本研究は,経営環境の変化への適応のため,あるいは将来の事業構想のために,積極的に事業ポートフォリオを調整し,断行する「能動的撤退」に注目する。事業売却を除けば,この撤退には,事業撤退が起点となって製品差別化を果たす「適応的撤退(撤退した事業で培った知識を既存事業において活用するもの)」と,新規事業創造を果たす「創造的撤退(撤退した事業で培った知識を事業創造において活用するもの)」の2つが存在する。本研究は,キヤノン株式会社の3つの撤退事例(シンクロリーダー事業,パソコン事業,ディスプレイ事業)から,これらの能動的撤退プロセスを明らかにした。