著者
白木 与志也 武田 甲 岡本 保 北 宜裕
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 = Tea research journal (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
no.115, pp.21-25, 2013-06

神奈川県の「足柄茶」は,2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う福島第1原子力発電所事故により放出された放射性セシウム(Cs)に汚染され,2011年5月に摘採された一番茶の生葉から当時の暫定規制値(500Bq/kg)を超える放射性Csが検出された。この規制値は荒茶などにも適用されたため,本県産の一番茶の大部分が出荷停止となり,生産者には大きな損害を与えることとなった。このような中で,筆者らはこれまでに,放射性Csは,茶の古葉及び枝に多く含まれていることや茶樹の放射性Csの低減については,古葉及び校を除去するせん枝が効果的であることを明らかにした。これらの知見をもとに,県内では生産者によるせん枝が実施された結果,2012年5月に摘採された一番茶では,放射性Cs濃度が飲用茶の基準値(10Bq/kg)以下となり,市場出荷が可能となった。ところで,日本における放射性物質に汚染された茶に関する研究は,1950~60年代に数例,今回の福島第1原発事故に関連した研究が数例ある他はほとんどなく,放射性Csの低減については,せん枝以外の報告はない。このような中で,放射性Cs濃度の高い部分を洗浄することにより,樹体の放射性Cs濃度を低減できる可能性が考えられ,モモでは樹皮洗浄による放射性物質の低減効果が確認されている。また,過去に日本で行われた研究では,茶葉の溶液浸漬による放射性物質の洗浄効果が確認されている。こうしたことから,本研究では,茶樹の高圧洗浄及び枝の酸・アルカリ溶液処理による放射性Cs濃度の低減を試みたので報告する。