著者
柴田 真裕 田中 綾子 諏訪 清二
出版者
防災教育学会
雑誌
防災教育学研究 (ISSN:24359556)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.23-33, 2022 (Released:2023-10-31)

本研究は,全国の小学校127 校,中学校207 校,高等学校243 校,特別支援学校32 校の計 609 校を対象に防災マニュアルと防災訓練の現状について調査したものである。 防災マニュアルについて,高等学校,特別支援学校では他の学校種と比較し防災マニュアルの 設置が進んでいない状況が明らかとなった。防災訓練については,小学校は他の学校種と比較し, 1 年に複数回数の実施が多く,「1 回」だけの実施は少ない。その一方,高等学校は「1 回」のみ の実施が多く,「3 回」,「5 回以上」といった複数回数の実施は少ない結果が得られた。 本研究結果から,学校種が進むにつれ,防災に対する取り組みが疎かになっており,また,「防 災マニュアル」,「防災訓練」で学校現場が感じている課題は外部組織等との連携によって解決に 導く事ができる可能性が示唆された。
著者
田口 瑞穂 川村 教一 澤口 隆
出版者
防災教育学会
雑誌
防災教育学研究 (ISSN:24359556)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.67-74, 2022 (Released:2023-11-07)

日本国内の国公私立大学8 大学の大学1 年生720 人を対象とした自然災害に関する認識についてのアンケート調査結果を再分析した。高校生時代の地理A および地学基礎の学習歴と自然 災害に関する意識の関係では、地理A の履修者の方が地学基礎選択者よりも、地震、津波、洪 水について意識が高かった。教科書における自然災害に関する記述量を比較したところ、地学基 礎よりも地理A の方が多かった。地理A 履修者の自然災害に対する怖さの意識の差は、高校時 代の自然災害に関する学習量の多さと関係がある。
著者
柴田 真裕 田中 綾子 舩木 伸江 前林 清和
出版者
防災教育学会
雑誌
防災教育学研究 (ISSN:24359556)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.19-30, 2020 (Released:2021-10-19)

日本の小学校,中学校,高等学校の防災教育の実情と課題についてアンケート調査によって明らかにした。 結果は次のとおりである。 1)防災教育を実施していない学校が非常に多く,その割合は,小学校が約20%,中学 校が約30%,高等学校が約40%であった。 2)ほとんどの学校で,防災教育の年間実施回数は,1 回から3 回程度であり,体系的な 教育がなされていない。 3)文科省が求めているような各教科による防災教育はほとんど行われていない。 4)教員の防災に関する知識が不足している。 5)防災教育教材の多くが受け身型の授業のための教材であり,教員が使用したくなるア クティブラーニング教材が少ない。
著者
近藤 誠司
出版者
防災教育学会
雑誌
防災教育学研究 (ISSN:24359556)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.31-41, 2020 (Released:2021-10-19)

日本社会では今、多種多様な防災教育がおこなわれており、まさに活況を呈しているかに見える。しかしこれは、間歇的に盛り上がりをみせる単なる社会の要請に過ぎず、喉元を過ぎればすぐに停滞してしまう危険性もある。こうした情況をふまえたときに、われわれはなぜ防災教育に注力するのか、その根拠を理論的に探究しておく必要がある。そこで本研究では、偶有性に根拠をもつ「倫理の虚構性」に限界や制約をみるのではなく、偶有性を倫理の土台に据えることによって防災教育実践のアドバンテージを見出す理論構築をおこなった。さらに、未定の価値を生み出すポテンシャリティを孕んだ防災教育実践こそが、まずもって現前の取り組み自体を賦活し、防災教育以上の価値あるアクションとなり得ることを示した。そしてさいごに、合理性・効率性を重視する道具主義的な防災教育観を超克しようとする最新の議論―“ コンサマトリーな防災” や“ すごす関係”―との接続を検討した。