著者
林 辰美 片山 喜美子
出版者
賢明女子学院短期大学
雑誌
Beacon (ISSN:02881187)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.37-43, 1982-03-10

栄養指導の基礎資料とする目的で、本学食物専攻科生全員30名を対象に、1979年12月の通常の授業のある日(平日)と休日の2日間に、生活時間調査と食物調査を実施した。その結果、下記のことがわかった。1.消費エネルギー量は、平日2071kcal±239kcal、休日2029kcal±278kcalであった。2.摂取エネルギー量は、平日1842kcal±317kcal、休日1856kcal±393kcalであった。3.摂取エネルギー量は、消費エネルギー量の平日89%、休日91%と少なかった。4.学生個々についてみると、個体差が大きく、目標とする栄養所要量よりも、はるかにかけ離れた学生が、消費エネルギー量では、平日43%、休日37%もおり、摂取エネルギー量では、平日60%、休日57%を占めた。5.生活時間調査を分類すると、睡眠時間は、平日7時間36分±40分、休日9時間10分±72分で、休日に多く、有意差が認められた。休日には、生理的、家事作業、自由、その他の移動時間が多く、学業、通学時間が少なく、全てに有意差が認められた。6.穀類エネルギー比は、平日38.8%、休日35.6%で、ばらつきが大きく、極めて低いことがわかった。間食よりのエネルギー量の比率は、平日19.5%、休日22.1%であり、間食はほとんどの学生が摂取しており、その量も多いことがわかった。とくに不足している栄養素は、カルシウム・鉄である。
著者
田靡 幸子
出版者
賢明女子学院短期大学
雑誌
Beacon (ISSN:02881187)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.67-74, 1987-03-10

副食として利用される料理の種類を朝食では主食形態ごとに、夕食では食品の主材料ごとにまとめ年代別、地域別に料理の種類の頻度によって分布図を作成し比較検討した結果次の内容を要約できた。1.朝食において米飯食の副食に味噌汁の頻度が高く年代・地域に関係なく浸透している。副菜には漬物類、卵料理、味つけのりが多く若年令層では冷凍食品、肉料理など比較的洋風指向が目立った。麺類食の場合汁物はないが米飯食に類似した傾向である。パン食では卵料理、生野菜のサラダ、燻製品に集中し副食の種類が狭まり特に高年令層ほどこの傾向が強い。2.昼食の際の飲物として米飯食の場合緑茶に集中し、パン食では比較的若年令層に牛乳高年令ほどコーヒーが好まれるが相対的にジュース類の利用が少ない。また住宅地域において農作地域の牛乳の頻度と対照にコーヒーが多いことがわかる。3.夕食における食品ごとの副食の頻度について野菜類;頻度の高い料理に煮物、炒め物があり40,50才代の煮物に対し若年令層では炒め物が多い。商業・農作地域に比較し住宅地域では天ぷら、炒め物など種類の多様な傾向がうかがえる。卵類;厚焼卵の頻度が最も高く年代別に差がみられる。若年令層は目玉焼、高年令層ほど茶碗蒸、ゆで卵の頻度が上昇する。獣鳥肉類;最も頻度の高いものは豚肉-トンカツ、鶏肉-から揚げ、牛肉-鉄板焼き・すきやき、挽肉-ハンバーグである。概して揚げ物と炒め物の種類に集中し、40才代までと50才代の頻度分布に有意の差を認めた。魚貝類;年代,地域別の変化が比較的明瞭で煮物は20才代に対し照り焼きは50才代に頻度の上昇がうかがえる。さらに農村の素焼きに対し住宅地域では煮物が多いことはやや濃厚な調味と多彩な味覚を好む傾向の現れと推察する。白米;年代にかかわらずカレーライスの使用頻度が高く、丼物は50才代、チキンライスは20才代に多い。地域差は殆んどなく炒飯、すし類に僅かバラツキが生じた。4.夕食における汁物料理の種類は味噌汁、すまし汁に集中しこのほかの種類は頻度が低い。粕汁に50才代の頻度がやや高く和風指向の傾向と察した。年代別にながめて20才代は食習慣や伝統的な料理の種類に縁が薄く自由な選択傾向から洋風指向となり、30,40才代は家族構成の年令からも子育て時代にあたり食事の質・量ともに食事担当者の望ましい選択眼が要求される時期でもあり料理の種類にも濃厚で実質本位なものが多い。さらに年代がすすむといわゆる淡白な料理や年令相応の自分の嗜好に適応させた選択で予想外に日本的な習慣食が日常食パターンに利用されている。地域別では農作、商業、住宅地域で比較したが住宅地域において幅広い料理が組みこまれ積極的に洋風指向がすすみ料理の種類に幅が広い。一方他の地域では和風指向がうかがえ高年令層とやや類似したパターンと推察した。食生活自体特に伝統的習慣的なものであるだけに、変化に対する抵抗は一般に強い。日本人の食生活には米飯を中心とする特徴の上に食習慣と経済性を中心とした献立意識が濃い傾向といわれてきたが本調査においても予想通り漬物とか味噌汁の摂取に代表される伝統的嗜好が強く残っていることがわかる。今後、数多くの食品情報の激増する中で新しい食品と伝統食品との調和さらに合理性指向を含めた日常食の献立内容の推進を課題にしていきたい。本研究に際し、本学調理研究室高沢いづみ姉にご協力いただきましたことを深謝いたします。