著者
中田 行重 井上 菜々 斧原 藍 澁川 沙由理 武 宏美 西中 さおり
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : bulletin of the Graduate School of Professional Clinical Psychology, Kansai University = サイコロジスト : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-10, 2014

共感は多くの対人援助職における重要な技能であるが、性的暴行やいじめ問題の防止のために共感訓練の機会が増加している現在の状況を考えると、一般市民にとっても意味のある心の在り方のように思われる。共感訓練はこれまで言語的応答に焦点を当ててきたが、パーソンセンタードの理論からは共感は言語的応答ではなく内的態度であると言われている。共感訓練の必要性とその理論を背景に筆者らは一般市民のための共感訓練ワークショップを2回開催した。本稿はその様子と参加者の感想を紹介し、この経験から筆者らが学んだことを述べるものである。
著者
小田原 康貴 島田 諒也 池見 陽
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : bulletin of the Graduate School of Professional Clinical Psychology, Kansai University = サイコロジスト : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
no.10, pp.9-16, 2020

最近、池見が執筆する心理療法論に散見される「追体験」という語についての理解を深めることが本論の目的であった。まず、追体験について池見がすでに論じていることをまとめ、次に国内の心理学文献を中心に池見以外の研究者による追体験の記述を調べた。さらに池見へのインタビューを行い、そのインタビューで語られた内容について考察した。考察では、追体験のもつ特徴と聴き手の追体験が話し手にもたらすものといった2点について、これまでの池見の記述に見当たらないもの、あるいは強調されていない点に注目した。追体験は人が生来持つ機能であると池見は考え、他者の体験をそのまま理解しようという目論見があるときに追体験が立ち現れていること、その追体験は全く新しい間主観的な現実であることが考察された。
著者
酒井 久実代 河﨑 俊博
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : bulletin of the Graduate School of Professional Clinical Psychology, Kansai University = サイコロジスト : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
no.8, pp.49-59, 2018

本研究では、「振り返り日記」の継続実施による、精神的健康への影響を検討することを目的とした。本研究では、実験参加者を募り、応募者をランダムに3群(出来事筆記群、感情筆記群、フェルトセンス筆記群)に振り分け、30日間の日記筆記を実施した。出来事筆記群では、一日の出来事を主に記述し、感情筆記群では出来事とそれに関連する感情を記述した。フェルトセンス筆記群では、出来事と感情及び、それらにまつわるフェルトセンスの記述を求めた。また、日記の実施前、実施直後、1カ月後に質問紙調査を実施し、日記終了後に自由記述形式で感想を求めた。日記の内容を確認したところ、教示通りではなかったため、本研究では3群を合わせて質問紙調査の結果を検討することにした。得られたデータを分析した結果、次のことが示された。心理的ストレス反応では、4下位尺度(疲労、怒り、循環器不調、抑うつ)において日記筆記前よりも日記筆記後に有意な低下がみられた。また、GHQ12の「うつ症傾向」、「社会的活動障害」においても有意な低下が確認された。精神的健康へのポジティブな影響としては、「本来感」と「本来的自己感」において、筆記前よりも筆記後に有意に増加していることが示された。さらに、自由記述を検討したところ、79の文章が抽出され、20個のキーワードが作成された。キーワードを類似性によりまとめると、「気持ちの整理」、「新たな気づき・理解」、「前向きな気持ち・考え」、「変化」、「反省」に整理された。これらの結果から、「振り返り日記」の効果について考察した。本研究は科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)の助成を受けた(基盤研究C 課題番号:15K04147)。
著者
筒井 優介
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : bulletin of the Graduate School of Professional Clinical Psychology, Kansai University = サイコロジスト : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
no.5, pp.73-81, 2015

本稿は、筆者が"夢PCAGIP"と称したワークの試みを紹介するものである。夢PCAGIPとは、小グループで夢提供者が自身の夢の意味を見出すことを援助するワークであり、PCAGIP法と夢フォーカシングを参考にしている。PCAGIP法は、PCAグループとインシデント・プロセスを組み合わせた事例検討法である。PCAGIP法でテーマとして取り上げられるのは現実に起こっている事例がほとんどであり、現実に起こっていない夢を取り上げた例はない。そこで、筆者はPCAGIP法に夢解釈を応用したグループワークである夢PCAGIPを試みた。本稿では、夢PCAGIPの概要及び実施手順を紹介するとともに、ワークを実践した一例を報告する。さらに、夢をグループで扱う方法をいくつか検討し、夢PCAGIPの特徴について考察する。