著者
島井 哲志 大竹 恵子 宇津木 成介 池見 陽 Sonja LYUBOMIRSKY
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.845-853, 2004 (Released:2014-08-29)
参考文献数
31
被引用文献数
14

目的 本研究の目的は,日本版主観的幸福感尺度(Subjective Happiness Scale: SHS)の信頼性と妥当性を検討することであった。方法 日本版 SHS は 4 項目からなる尺度であり,翻訳およびバックトランスレーションを行い,原著者による概念の同一の確認を受け,日本語版項目の作成を完成した。大学生364人(男性158人,女性206人)を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は,日本版 SHS, positive health のうち生活充実感の 5 項目,GHQ28項目,自尊感情尺度10項目であった。再テスト信頼性は 5 週間隔で行った。結果 日本版 SHS の α 信頼性係数は.80から.84であり,内的整合性が高いと考えられた。再テスト信頼性については,5 週間隔において相関係数が.86であり,日本版 SHS の再現性は高いことが示された。因子分析の結果から,SHS は 1 因子構造であることが示された。SHS の得点が高いことが,positive health の質問項目,自尊感情の得点の高さに関連していることが明らかにされた。また,SHS が高い人は健康であり,特に,うつと負の相関関係にあることが示された。結論 以上の結果から,日本版 SHS 尺度は,再テスト信頼性,収束的妥当性,弁別的妥当性ともに高いことが示唆された。
著者
大竹 恵子 島井 哲志 池見 陽 宇津木 成介 ピーターソン クリストファー セリグマン マーティンE. P.
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.461-467, 2005-12-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
23
被引用文献数
21 20

Purpose of this study was to develop the Japanese version of the Values In Action Inventory of Strengths (VIA-IS). Japanese VIA-IS was back-translated, and their items were checked by the developers of the original VIA-IS. Participants in our standardization study were 778 undergraduate students who answered a battery of self-report questionnaires. The battery consisted of the Japanese versions of VIA-IS, Subjective Happiness Scale, General Health Questionnaire, and NEO Five Factor Inventory (NEO-FFI). It was found that VIA-IS has high internal consistency and test-retest reliability. Happier people showed higher overall scores on VIA-IS and on almost all subscales both in men and women. Scores on VIA-IS were higher in the healthier group than in the unhealthy group, especially on the subscales of depression and impediment of social activities. Subscales of NEO-FFI were related to subscales of VIA-IS in a consistent way. High nomination groups showed significantly higher scores on eight subscales of VIA-IS than low nomination groups.
著者
増井 武士 池見 陽 村山 正治
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.243-248, 1983-06-01

フォーカシングにおいて, ある問題全体についての身体の感じ(フエルト・センス)とか, 漠然としたままでいることとか, そこから現われてくる何かを待つこと, など前言語的な体験に注意を向けることが大きな特徴である. また, その特徴は必然的に, フォーカシングにおけるある時点での体験をフォーカシング過程全体の流れの中で位置づけたり,自律性陰反応らの他の類似した体験との弁別を困難なものにしている.それ故フォーカシング体験を, あるstepごとに点検したり, その体験の質を吟味することが必要となる. 本論では, フォーカシングの提唱者である. E.T.Gendlinらがワークショップ利用している"Focusing Check"をより具体的で, かつ日本においても実用可能な形に作成しなおしたものを報告する. この点検の利用により, フォーカシング体験の推進の一助となりえる.(1983年2月21日 受付)
著者
田中 秀男 池見 陽
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-17, 2016-03-08

ユージン・ジェンドリンがフォーカシングを提唱したきっかけとして、カール・ロジャーズのもとで行われていた以下の2 つのリサーチ結果が、著作『フォーカシング』(Gendlin, 1981)で挙げられている。「1.心理療法の成功と相関があったのは、クライエントが“何を”話したかではなく、“いかに”話したかであった」「2.心理療法が成功するか/失敗するかは、ごく初期の面接から予測できてしまう」。実は、この2つは、ジェンドリンに先行する研究者たちによる別のリサーチの流れだったことがわかってきた。上記の1.がEXPスケール(体験過程尺度)の源流であり、上記の2.がフォーカシング教示法の源流である。本稿では、こうした2つのリサーチの流れがジェンドリンに継承されることで、どのように合流して現在の「フォーカシング」となったのかを提示する。
著者
池見 陽 筒井 優介 平野 智子 岡村 心平 田中 秀男 佐藤 浩 河﨑 俊博 白坂 和美 有村 靖子 山本 誠司 越川 陽介 阪本 久実子
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-12, 2019-03

自分の生きざまを動物に喩えて、その動物は何をしているのかなどと形容しながらペアで話し合うワークを考案し、それを「アニクロ」(Crossing with Animals)と命名した。本論では、その理論背景として実存哲学、メタファー論やジェンドリン哲学を含む体験過程理論について論じたあと、その実践を3つの側面から検討した。それらは、アニクロ初体験者に対するアンケート結果について、産業メンタルヘルス研修でのアニクロの応用について、そしてゲシュタルトセラピーにおけるアニクロの実践についてである。アニクロは多用な実践が可能であるが、その基本原理はフォーカシングであり、本論は最後に、アニクロを通してみたフォーカシングの基礎理論を考察した。
著者
池見 陽
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.688-694, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
13

本稿は心身医学を専門とする医師が知っておくべき心理学について, その理論と実践を論説したものである. 米国の哲学者でフォーカシング指向心理療法を見い出したEugene Gendlinの理論より, 体験過程と追体験といった現象学的・解釈学的概念について論じ, これらの実践上のポイントをいつくか提示した. また, Gendlin理論に基づく体験過程様式およびその評定のための第三者評定尺度であるEXPスケールの概要を示し, このスケールを臨床に役立てるためのポイントを提示した. また, 今日の研究動向として, 現在開発中のEXPチェックリストおよびそれを用いたサイコセラピー・アウトカムの国際共同研究計画について言及した.
著者
岡本 和磨 池田 陽子 甲斐 朱莉 末元 真子 水谷 晴香 米田 紗菜 池見 陽
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
vol.11, pp.11-19, 2021-03

PCAGIPとは、メンバー間の相互作用を通じて事例提供者に役立つ新しい取り組みの方向や具体策のヒントを見出すためのグループ体験であり(村山・中田,2012)、様々な分野で活用されている。しかし昨今の世界的な感染症の流行に伴い、オンライン上で行うなど方法上の工夫が求められている。そこで、本論文ではZoomを使用してPCAGIPを実践し、オンライン上で行うことのメリット・ディメリットについて検討した。また、事例提供者にとってどのような応答が役に立っていたのかについても検討を行った。実施の結果メリットとして、随時全員の表情を画面上で真正面から捉えることが出来るため、対面にはない臨場感のある体験が可能であることが挙げられた。ディメリットとしてセキュリティの脆弱性に対する5つの不安が挙げられた。しかし、Zoomのアップデートによりそれらの不安のほとんどが解消されているのではないかと思われた。また、PCAGIPにおいて役立つ応答を検討した結果、メタファー表現による自己理解の生成過程、及びメタファー表現との交差やメタファーを用いた相互の追体験が重要であると考えられた。
著者
小田原 康貴 島田 諒也 池見 陽
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : bulletin of the Graduate School of Professional Clinical Psychology, Kansai University = サイコロジスト : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
no.10, pp.9-16, 2020

最近、池見が執筆する心理療法論に散見される「追体験」という語についての理解を深めることが本論の目的であった。まず、追体験について池見がすでに論じていることをまとめ、次に国内の心理学文献を中心に池見以外の研究者による追体験の記述を調べた。さらに池見へのインタビューを行い、そのインタビューで語られた内容について考察した。考察では、追体験のもつ特徴と聴き手の追体験が話し手にもたらすものといった2点について、これまでの池見の記述に見当たらないもの、あるいは強調されていない点に注目した。追体験は人が生来持つ機能であると池見は考え、他者の体験をそのまま理解しようという目論見があるときに追体験が立ち現れていること、その追体験は全く新しい間主観的な現実であることが考察された。
著者
池見 陽 久保田 進也 野田 悦子 富田 小百合 林田 嘉朗
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.18-29, 1992-01-20
被引用文献数
6

The objective of this study was to articulate the person-centered approach (PCAp) in theory and in the research and practice of occupational mental health. First, Carl Rogers' person-centered theory was reviewed. Secondly, a study on 1,661 workers was presented in which psychological variables such as fatigue (FG), depression (DP) and anxiety (AX) were found to be negatively correlated with relationship scales concerning the workers' perception of the person-centered attitudes (PCA) of their superiors, the democratic leadership of their superiors (DEM) and the overall activation (ACT) of their worksites. Significant differences in FG, DP and AX were found among workers who perceived of their superiors as having either high or low PCA. Workers who reported that their superiors had high PCA had significantly less FG, DP and AX than those who perceived of their superiors as having low PCA. Similar results were also obtained when high DEM/low DEM and high ACT/low ACT were compared in terms of workers' FG, DP and AX. Thus, the PCA of job superiors was considered to be positively related to the mental health of workers. Thirdly, PCA training in industry was introduced and evaluated. A total of 137 trainees (managers) conducted active listening, a basic skill in the PCAp, and filled out a relationship inventory immediately afterwards, evaluating themselves as listeners and their partners as listeners. A comparison of scores between the first and last sessions of training showed significant increases in empathy, congruence and unconditional positive regard at the last session in both the speakers' version and the listeners' version of the relationship inventory. Cases showing changes in human relations at work as a consequence of PCA training, reported by the trainees and confirmed by an occupational health nurse, were presented. This study showed that PCA, which is positively related to workers' mental health, can increase as a result of training. The implications of these studies are discuss-ed and various possibilities for further research using the concepts' of PCAp are presented. The authors hope that such a viewpoint in occupational mental health may lead to fruitful research and practice in the field of occupational medicine.
著者
大竹 恵子 島井 哲志 池見 陽 宇津木 成介 ピーターソン クリストファー セリグマン マーティンE. P.
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.461-467, 2005
被引用文献数
20

Purpose of this study was to develop the Japanese version of the Values In Action Inventory of Strengths (VIA-IS). Japanese VIA-IS was back-translated, and their items were checked by the developers of the original VIA-IS. Participants in our standardization study were 778 undergraduate students who answered a battery of self-report questionnaires. The battery consisted of the Japanese versions of VIA-IS, Subjective Happiness Scale, General Health Questionnaire, and NEO Five Factor Inventory (NEO-FFI). It was found that VIA-IS has high internal consistency and test-retest reliability. Happier people showed higher overall scores on VIA-IS and on almost all subscales both in men and women. Scores on VIA-IS were higher in the healthier group than in the unhealthy group, especially on the subscales of depression and impediment of social activities. Subscales of NEO-FFI were related to subscales of VIA-IS in a consistent way. High nomination groups showed significantly higher scores on eight subscales of VIA-IS than low nomination groups.