著者
英 真希子 中川 浩一 加茂 理栄 石井 正光
出版者
日本皮膚悪性腫瘍学会
雑誌
Skin cancer : official organ of the Japanese Society for Skin Cancer = 皮膚悪性腫瘍研究会機関誌 (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.146-150, 2006-10-31
参考文献数
20
被引用文献数
1

71歳, 男性。平成13年11月, タバコの火にて右栂指に熱傷を受傷。平成15年6月頃より潰瘍化し, 近医にてbasic-FGF製剤などにより加療を受けるも改善せず, 同年12月当科に紹介された。右担指に5×2.5cm大の潰瘍が存在し, 辺縁は堤防状に隆起し, 浸軟していた。病理組織検査により基底細胞癌と有棘細胞癌のそれぞれの特徴を持った部分が混在し, それらの間に移行部がみられた。また, サイトケラチンを抗原とするKレ1抗体を用いた免疫組織学染色において染色性の違いを認めた。以上, 自験例をBasosquamous cell carcinomaと診断した。腫瘍辺縁より1cm離して腫瘍を摘出し, 植皮術を行った。症例の概要を記載するとともにBSCCの位置づけ, 本邦の報告例などについて, 若干の文献的考察を行った。
著者
横井 郁美 宗廣 明日香 森上 純子 米田 耕造 岡田 将生 濱本 有介 窪田 泰夫
出版者
The Japanese Skin Cancer Society
雑誌
Skin cancer : official organ of the Japanese Society for Skin Cancer = 皮膚悪性腫瘍研究会機関誌 (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.165-169, 2011-09-30

53歳,女性。幼小児期に左側頭部の脱毛斑に気付くも放置。49歳時に左側頭葉の脳出血を発症し,開頭血腫除去,人工骨・硬膜による再建術を受けた。この時,既に脱毛班部に径3cmの腫瘤が存在していた。当科初診時,左側頭部に6×5×1.5 cmの凹凸不整な紅色腫瘤と腫瘤から連続した黄色脱毛局面を認めた。臨床,組織学的に腫瘤はケラトアカントーマ型有棘細胞癌(KA type SCC),脱毛斑は脂腺母斑で,両者は切片上連続していた。脂腺母斑を母地としたKA type SCC(T3N0M0, stage II)と診断した。辺縁6mm離し骨膜上で切除,分層植皮術を施行。術後,緑膿菌感染を発症し保存治療を行うも効果は乏しかった。感染は人工骨・硬膜に波及し硬膜外膿瘍を形成。感染した人工骨・硬膜除去し,広背筋皮弁で再建した。経過は良好で手術1年後の現在,再発は無い。
著者
丹羽 祐介 長谷川 敏男 宿谷 涼子 大熊 慶湖 平澤 祐輔 池田 志斈
出版者
The Japanese Skin Cancer Society
雑誌
Skin cancer : official organ of the Japanese Society for Skin Cancer = 皮膚悪性腫瘍研究会機関誌 (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.90-93, 2010-05-15

73歳,女。約半年前より外陰部の腫瘤に気付いた。徐々に腫瘤が増大したので近医を受診し,皮膚生検にて有棘細胞癌の診断を受け,当科に紹介受診した。初診時,左大陰唇に5cm大の広基性隆起性腫瘤が存在した。また,外陰部全体が紅白色の萎縮性局面を呈し,陰核の消失,膣口の狭小化を伴っていた。腫瘍の周囲から2cm離し,肛門周囲と尿道周囲では1cm離して,腫瘍拡大切除術,および分層植皮術を施行した。同時に施行したセンチネルリンパ節生検術にて,両鼠径リンパ節に転移が検出されたため,両側鼠径リンパ節郭清術を併せて施行した。病理組織検査では,腫瘍部は角化傾向の強い異型細胞が増殖しており有棘細胞癌と診断した。腫瘍辺縁部では液状変性や真皮上層の帯状リンパ球浸潤,透明帯がみられたため,臨床所見と併せ硬化性萎縮性苔癬と診断した。外陰部に生じた硬化性萎縮性苔癬は有棘細胞癌の発生母地となり得るので,注意深く経過観察する必要がある。