著者
岩井 善郎
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

耐摩耗設計における材料選択と摺動条件選定の指針を得るために、シビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移条件および摩耗率に及ぼす材料の含有成分と摺動環境の影響を研究した。1.成分含有量の異なる種々の銅合金についてピン・ディスク形式の摩耗試験を行った。その結果、Niの含有率が大きい銅合金では、シビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移がみられるが、Ni含有率が30%以下のCuーNiーZu合金(洋白)ではいずれの摩擦条件でもシビヤ摩耗を生じる。洋白材の耐摩耗性はNiとZnの含有率の増加にともなって向上する。その程度はNiのほうが著しいが、Znの含有率が増加するとNiの影響は小さくなる。このような成分含有率と摩耗量の関係を立体座標上にプロットして耐摩耗性を平面で表示することによって、最適な耐摩耗性材料の選択や創製の指針を提示できることが明らかになった。2.空中、イオン交換水中、食塩水中で炭素鋼どうしのすべり摩耗試験を行った。液の腐食性が増すとマイルド摩耗を生じる領域は高荷重側にシフトする。また液中のマイルド摩耗率は低荷重域では荷重によらずほぼ一定値を示すが、高荷重域では比例して増加するので、マイルド摩耗と荷重の関係は折れ線で示される。前者は表面の腐食疲労破壊による摩耗、後者は疑着摩耗に支配されているが、いずれも液の腐食性にともなって増加することが明らかになった。3.食塩水中の軟鋼の摩耗では、カソ-ド防食を施すと自然腐食下に比べてマイルド摩耗を生じる領域は低荷重側にシフトするが、マイルド摩耗率は小さくなることが明らかになった。4.前項の2、3の結果をから、腐食環境下の鋼の耐摩耗性はシビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移条件と摩耗率から評価すべきことの重要性が一層明らかになった。このような観点から、腐食摩耗に及ぼす成分元素の影響を引続き研究する予定である。

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こんな研究ありました:金属の耐摩耗性に及ぼす合金成分の影響(岩井 善郎) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/01550114

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