著者
茂原 信生 松村 博文
出版者
獨協医科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

本研究は、当面は基礎データの収集と文献的データの収集が主な仕事である。基礎データの収集は、計測による研究を主にし、歯冠近遠心径頬舌径の計測をおこなった。非計測的データ(22項目)もあわせて収集した。対象とした材料は、日本およびアメリカの各研究施設に所蔵されているアジア系モンゴロイド人骨合計2249の上・下顎歯である。分析は統計的な解析方法(多変量解析)を用いた。それにもとづいて、まず日本国内の各時代・各地域の集団を調査し、それぞれの変異を明かにした。計測的なデータから得られた分析結果と非計測的なデータから得られた分析結果とは、現在収集している日本人のデータに関するかぎり、かなり高い関係が見られた。どちらの方法によっても「縄文・アイヌ」の集団と「弥生・中世・現代人」の集団とに分離された。この他、古墳人は弥生時代人に最も近く、現代人の含まれる集団の方に属している。ただし、種子島の弥生人は「縄文・アイヌ」の集団に近く位置し、やや特殊な位置にある。このような地方差や時代差を検討するためには、日本人の祖先となるモンゴロイドの大陸からの流入に関しても、琉球列島経由にようものと朝鮮半島経由によるものとの相互関係を詳しく調べる必要がある。縄文人では、東日本縄文人と西日本縄文人との間の歯の大きさに差があり、東日本縄文人の方がやや小さかった。このように、縄文時代人の中での歯の大きさの変異は地理的な分散と対応している。今後の分析には、日本人の直接的な祖先となったと考えられる系統をひいている中国人のデータが必要になり、次年度の調査目標である。これらの歯の調査の他に、アジア・オセアニアおよび北米のモンゴロイドの歯に関する文献データベースを集積中である。

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