著者
馬場 悠男 松井 章 篠田 謙一 坂上 和弘 米田 穣 金原 正明 茂原 信生 中山 光子
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

上野寛永寺御裏方墓所から発掘された徳川将軍親族遺体のうち保存の良い15体の人骨について、修復・保存処理を施し、形態観察・写真撮影・CT撮影・計測を行って、デジタルデータとして記録保存した(馬場・坂上・河野)。さらに、遺骨の形態比較分析(馬場・坂上・茂原・中山)、ミトコンドリアDNAハプロタイプ分析(篠田)、安定同位体による食性分析および重金属分析(米田他)、寄生虫卵および花粉分析(松井・金原他)を行い、親族遺体の身体的特徴と特殊な生活形態を明らかにした。
著者
藤田 尚 茂原 信生 松井 章 鈴木 隆雄
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

現在まで、韓国の古人骨研究でまとまったものは、日本の古墳時代初期に相当する礼安里人骨の報告があるのみと言って良いだろう。しかし、礼安里人骨は個体数こそ70個体を数えるが、保存状態が良好なものはごくわずかであった。しかし、平成16年度から調査研究を行った勒島人骨は、礼安里人骨の時代をさかのぼること約400年。日本の弥生時代の中期初頭に相当し、しかも極めて保存状態が良好な個体が数多くある人骨群であった。また、当時の韓国にどのような疾病が存在したかと言う観点での研究は、現在まで全くなされていない。結核の起源など、渡来人によって日本に持ちこまれた疾病を解き明かすことは、昨今の古病理学の大きな課題であり、日本、韓国を始めとする、東アジアの疾病史の研究においても、非常に価値が高いものであった。以上のように、平成16年度より、基盤研究(C)「韓国勒島出土人骨に関する形質人類学的研究」を行い、日本の弥生時代中期相当の、韓国南部の人骨の形質や古病理学的分析を進めてきた。その結果、当時の日本と韓国は、文化的・人的交流が非常に盛んであったことが、明らかとなった。一例を挙げれば、勒島遺跡からは、日本の弥生土器(須玖I式、II式土器など)が多数出土し、恐らくは、日本の土器が搬入されたのではなく、「日本人が移住していた」と考えられる。人骨の形質は、概ね北部九州地方から出土する「渡来系弥生人」に類似するが、男性で変異が大きく、女性で変異が小さいという特徴を持つ。この傾向は、礼安里人骨、土井ヶ浜人骨には共通するが、金隈人骨の女性は変異が大きく、違った傾向を持つ。
著者
松井 章 石黒 直隆 南川 雅男 中村 俊夫 岡村 秀典 富岡 直人 茂原 信生 中村 慎一
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

オオカミからイヌ、イノシシからブタへと、野性種から家畜種への変化を、従来の比較形態学的な研究に加えて、DNA分析と、安定同位体による食性の研究により明らかにした。また中国浙江省の約6千年前の田螺山遺跡、韓国金海會〓里貝塚の紀元前1世紀から紀元後1世紀の貝層から出土した動物遺存体、骨角器の報告書を、国内の遺跡同様に執筆した。さらに、ラオス北部の山岳少数民族の村に滞在し、ブタ、イヌ、ニワトリの飼育方法、狩猟動物と焼畑との関係について調査を行った。
著者
茂原 信生
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.165-178, 1996 (Released:2009-09-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

The direction of the orbits in mammals, especially in primates, was examined to explain orbital convergence in primates. The orbital axes of old world monkeys are between 40°∼50°, while those of new world monkeys exceed 50°. The orbital axes tend. to be even larger in callithricids. In Prosimians, the axis angle ranges from 60°∼100°, and is clearly larger than those of the anthropoids. The orbital axis angle of carnivores is between those of prosimians and anthropoids. However, their orbital planes have not turned to the front, because the olfactory sense is also important for them. Ungulates have large orbital axis angles over 100°. It is clear that arboreality is possible even if the orbit has not turned to the front as it is in anthropoids, because tree shrews or squirrels do not have orbits rotated to the front as in anthropoids. Carnivores, although they are terrestrial mammals, have orbital axis angle as small as in primates. As a result, the frontal rotation of the orbit was not caused simply by the adaptation to arboreal life, supporting the visual predation hypothesis advocated by Cartmill (1972).
著者
本郷 一美 石黒 直隆 鵜沢 和宏 遠藤 秀紀 姉崎 智子 茂原 信生 米田 穣 覚張 隆史 高橋 遼平 朱 有田 VU The Long
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本への家畜ブタ導入を判定する基礎資料として、現生および遺跡出土のイノシシ属の計測データを蓄積し、日本列島の南北におけるイノシシのサイズ変異の程度を明らかにした。また、東南アジア、琉球列島産の在来種ブタとイノシシおよび遺跡出土のイノシシ属のmtDNA分析を行った。日本在来馬の体格の変遷を探り、大陸のウマと比較するため、現生および中部~東北地方の古代、中世および近世の遺跡から出土したウマ骨格の計測データを収集した。
著者
香原 志勢 茂原 信生 西沢 寿晃 藤田 敬 大谷 江里 馬場 悠男
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.91-124, 2011-12-01
被引用文献数
4

長野県南佐久郡北相木村の縄文時代早期の地層(8300から8600 BP(未較正))から,12体の人骨(男性4体,女性4体の成人8体,および性別不明の幼児4体)が,1965年から1968年にかけての信州大学医学部解剖学教室を中心とする発掘で出土した。数少ない縄文時代早期人骨として貴重なもので,今回の研究は,これらの人骨の形態を報告し,従来明らかにされている縄文時代早期人骨の特徴を再検討するものである。顔高が低い,大腿骨の柱状性が著しい,歯の摩耗が顕著である,など一般的な縄文人の特徴を示すとともに,早前期人に一般的な「華奢」な特徴も示す。脳頭蓋は大きいが下顎骨は小さく,下顎体は早期人の中でもっとも薄い。下顎骨の筋突起は低いが前方に強く張り出している。上肢は華奢だが,下肢は縄文時代中後晩期人と同様に頑丈である。他の縄文時代早前期人と比較検討した結果,縄文時代早期人の特徴は,従来まとめられているものの若干の改定を含めて,次のように再確認された。1)顔面頭蓋が低い。2)下顎は小さいが,筋突起が前方に強く張り出す。3)下肢骨に比べて上肢骨が華奢である。4)下顎歯,特に前歯部には顕著な磨耗がある。<br>
著者
松井 章 石黒 直隆 中村 俊夫 米田 穣 山田 仁史 南川 雅男 茂原 信生 中村 慎一
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、農耕および家畜の起源とその伝播を、動物考古学と文化人類学、分子生物学といった関連諸分野との学際的研究から解明をめざすとともに、民族考古学的調査から、ヒトと家畜との文化史を東アジア各地で明らかにした。家畜飼育から利用への体系化では、日本、ベトナムや中国の遺跡から出土した動物骨の形態学的研究をすすめつつ、ラオスやベトナムの少数民族の伝統的家畜飼育技術や狩猟活動などの現地調査を実施した。東アジアの家畜伝播を知るうえで示唆に富む諸島において、先史時代や現生のイノシシ、ブタのmtDNA解析をすすめ、人の移動と密接に関係するものと、影響が見えないものとが明らかとなった。遺跡発掘試料の高精度年代測定研究では、暦年代較正の世界標準への追認、日本版の暦年代構成データの蓄積をすすめた。中国長江流域の新石器時代遺跡から出土した動物骨で炭素・窒素同位体比の測定では、ヒトによる給餌の影響から家畜化と家畜管理についての検討を行った。さらに、台湾を主体としたフィールドワークでは、犬飼育の伝播と犬肉食の世界大的な分布・展開の解明、焼畑耕作・家畜飼育と信仰・神話、また狩猟民の観念について探究した。
著者
本郷 一美 山田 昌久 那須 浩郎 米田 穣 姉崎 智子 茂原 信生
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は高精度の古環境情報を有効に抽出し、人工遺物や遺構などに関する考古学的な情報を統合する研究手法を確立することである。長野県のノンコ岩1岩陰と天狗岩岩陰遺跡において発掘調査を実施した。ノンコ岩1岩陰遺跡では、縄文晩期の遺物が出土した。天狗岩岩陰遺跡では、弥生時代前期から古墳時代前期までの文化層序が確認され、環境考古学的なデータを有効に抽出できた。人工遺物の他、多量の動・植物遺存体を採集し、C14年代測定、動植物遺存体の同定分析作業を実施した。
著者
茂原 信生
出版者
京都大学霊長類研究所
雑誌
霊長類研究所年報 (ISSN:02864568)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.133-136, 2006-07-15
著者
石黒 直隆 岩佐 光啓 佐々木 基樹 本郷 一美 遠藤 秀紀 茂原 信生
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本海外学術調査は、ベトナムの野生イノシシと家畜ブタに関して形態的計測と遺伝学的解析により、東アジアに広く分布する野生イノシシや東アジアの家畜ブタの遺伝的な源流はベトナムにあることを検証することを目的として行った。平成14年〜16年の3年間にわたり、ベトナムの北部、北西部、中部の山岳地帯に生息する野生イノシシとベトナムの山岳少数民族にて長年飼育されているベトナム在来ブタについて調査を行った。形態的計測は、主に各部落の農家に保管されている骨や博物館等に保管されている骨について行い、遺伝学的解析は、骨から採取した骨粉のほかに、現生動物に関しては、毛根や肉片などからDNAを分離してミトコンドリアDNA(mtDNA)の多型解析により系統解析を行った。3年間でベトナム各地にて調査収集したサンプルは248検体であり、それを遺伝的に解析し以下の成果を得た。1)本海外学術調査のきっかけとなったリュウキュウイノシシの起源がベトナムであると言う仮説は、本調査により現在もベトナムにはリュウキュウイノシシと遺伝的に近い野生イノシシが生息していることが証明されたことから、上記仮説を遺伝的に検証した。2)ベトナムに生息する野生イノシシとベトナム各地で飼育されている在来ブタは遺伝的に極めて多型に富んでおり、東アジアの家畜ブタの基層を形成する遺伝子集団であることが証明された。3)ベトナムには粗食に耐えうる在来ブタから形態的に小さいミニブタまで広く飼育されていることから、東アジアのイノシシ属の起源にふさわしい遺伝子資源をベトナムの在来ブタは有していることが証明された。上記成果の一部は英文誌にすでに公表されており、平成15〜16年度に得られた成果については現在投稿準備中である。
著者
茂原 信生 松村 博文
出版者
獨協医科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

本研究は、当面は基礎データの収集と文献的データの収集が主な仕事である。基礎データの収集は、計測による研究を主にし、歯冠近遠心径頬舌径の計測をおこなった。非計測的データ(22項目)もあわせて収集した。対象とした材料は、日本およびアメリカの各研究施設に所蔵されているアジア系モンゴロイド人骨合計2249の上・下顎歯である。分析は統計的な解析方法(多変量解析)を用いた。それにもとづいて、まず日本国内の各時代・各地域の集団を調査し、それぞれの変異を明かにした。計測的なデータから得られた分析結果と非計測的なデータから得られた分析結果とは、現在収集している日本人のデータに関するかぎり、かなり高い関係が見られた。どちらの方法によっても「縄文・アイヌ」の集団と「弥生・中世・現代人」の集団とに分離された。この他、古墳人は弥生時代人に最も近く、現代人の含まれる集団の方に属している。ただし、種子島の弥生人は「縄文・アイヌ」の集団に近く位置し、やや特殊な位置にある。このような地方差や時代差を検討するためには、日本人の祖先となるモンゴロイドの大陸からの流入に関しても、琉球列島経由にようものと朝鮮半島経由によるものとの相互関係を詳しく調べる必要がある。縄文人では、東日本縄文人と西日本縄文人との間の歯の大きさに差があり、東日本縄文人の方がやや小さかった。このように、縄文時代人の中での歯の大きさの変異は地理的な分散と対応している。今後の分析には、日本人の直接的な祖先となったと考えられる系統をひいている中国人のデータが必要になり、次年度の調査目標である。これらの歯の調査の他に、アジア・オセアニアおよび北米のモンゴロイドの歯に関する文献データベースを集積中である。
著者
香原 志勢 茂原 信生 西沢 寿晃 藤田 敬 大谷 江里 馬場 悠男
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
pp.1111180003-1111180003, (Released:2011-11-22)
被引用文献数
3 4

長野県南佐久郡北相木村の縄文時代早期の地層(8300から8600 BP(未較正))から,12体の人骨(男性4体,女性4体の成人8体,および性別不明の幼児4体)が,1965年から1968年にかけての信州大学医学部解剖学教室を中心とする発掘で出土した。数少ない縄文時代早期人骨として貴重なもので,今回の研究は,これらの人骨の形態を報告し,従来明らかにされている縄文時代早期人骨の特徴を再検討するものである。顔高が低い,大腿骨の柱状性が著しい,歯の摩耗が顕著である,など一般的な縄文人の特徴を示すとともに,早前期人に一般的な「華奢」な特徴も示す。脳頭蓋は大きいが下顎骨は小さく,下顎体は早期人の中でもっとも薄い。下顎骨の筋突起は低いが前方に強く張り出している。上肢は華奢だが,下肢は縄文時代中後晩期人と同様に頑丈である。他の縄文時代早前期人と比較検討した結果,縄文時代早期人の特徴は,従来まとめられているものの若干の改定を含めて,次のように再確認された。1)顔面頭蓋が低い。2)下顎は小さいが,筋突起が前方に強く張り出す。3)下肢骨に比べて上肢骨が華奢である。4)下顎歯,特に前歯部には顕著な磨耗がある。
著者
香原 志勢 茂原 信生 西沢 寿晃 藤田 敬 大谷 江里 馬場 悠男
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.91-124, 2011 (Released:2011-12-22)
参考文献数
75
被引用文献数
3 4

長野県南佐久郡北相木村の縄文時代早期の地層(8300から8600 BP(未較正))から,12体の人骨(男性4体,女性4体の成人8体,および性別不明の幼児4体)が,1965年から1968年にかけての信州大学医学部解剖学教室を中心とする発掘で出土した。数少ない縄文時代早期人骨として貴重なもので,今回の研究は,これらの人骨の形態を報告し,従来明らかにされている縄文時代早期人骨の特徴を再検討するものである。顔高が低い,大腿骨の柱状性が著しい,歯の摩耗が顕著である,など一般的な縄文人の特徴を示すとともに,早前期人に一般的な「華奢」な特徴も示す。脳頭蓋は大きいが下顎骨は小さく,下顎体は早期人の中でもっとも薄い。下顎骨の筋突起は低いが前方に強く張り出している。上肢は華奢だが,下肢は縄文時代中後晩期人と同様に頑丈である。他の縄文時代早前期人と比較検討した結果,縄文時代早期人の特徴は,従来まとめられているものの若干の改定を含めて,次のように再確認された。1)顔面頭蓋が低い。2)下顎は小さいが,筋突起が前方に強く張り出す。3)下肢骨に比べて上肢骨が華奢である。4)下顎歯,特に前歯部には顕著な磨耗がある。
著者
茂原 信生 小野 寺覚
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.361-379, 1987 (Released:2008-02-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1

鎌倉材木座遺跡(鎌倉時代~室町時代)から出土したイヌ(最小個体数30体)のうち,成獣8体(オス6,メス2)の頭蓋を中心に調査し,他の時代の犬骨と比較検討した。材木座犬骨は繩文犬より額段が小さく原始的である。頭蓋最大長の平均値は,繩文時代の田柄貝塚犬骨の平均値を上回っている。長径が大きくなっているわりに高径や幅径は大きくなっていない。この点で高径や幅径が大きいより後代の中世•近世犬骨とは異なっている。頑丈で,プロポーションは繩文時代犬骨とよく似ている。日本古代犬の体の大きさは繩文時代から鎌倉時代までに変化したが,頭蓋のプロポーションは,鎌倉時代よりあとの時代に大きく変化したと推測される。