著者
永田 憲史
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

財産的制裁をどのような場面で利用していくべきか、どのように使い分けていくべきかを明らかにする一助とするため、個々の財産的制裁の目的について探究を行なった。第一に、アメリカ合衆国の被害弁償命令に関する立法、判例、運用及び改革提案について、前年度に引き続いて研究を行ない、犯罪者が惹起した結果を犯罪者に認識させつつ、損害の回復を行なう目的を有していることを確認した。第二に、アメリカ合衆国で利用が拡大している、刑事司法で生じる費用・手数料の犯罪者への賦課に関する立法、判例、運用及び今後の動向について研究を行ない、犯罪により生じる負担を犯罪者に認識させつつ、国庫収入の増大を図る目的が存在することを考察した。第三に、没収に関するアメリカ合衆国及びドイツの立法、判例、運用及び議論を参考にすることにより、(1)財産に関連する場面では、犯罪収益を剥奪する目的があること、(2)犯罪収益を罰金により剥奪することもあり、没収と罰金の境界線がしばしば不明確であることを確認した。第四に、罰金刑に関するアメリカ合衆国及びドイツの立法、判例、運用及び議論について研究を行ない、その日的が多岐にわたり、それゆえ、罰金額の量定の理由が分かり難くなっていることを確認した。以上から、犯罪により被害者に直接生じる被害を被害弁償命令で、刑事司法に及ぼされる負担を費用・手数料で、犯罪収益を没収でそれぞれ取り扱うこととし、それ以外の要素、すなわち犯罪態様や法秩序の侵害などだけを罰金で取り扱うことにより、どのような負担を誰に与えたのかを犯罪者にも被害者にも一般国民にも明確にすることができ、有用であると考えるに至った。

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こんな研究ありました:財産的制裁についての包括的検討(永田 憲史) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/01J03640

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