- 著者
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森 源治郎
- 出版者
- 大阪府立大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1990
ヒガンバナ科球根植物の種間及び属間雑種を育成することを最終目的とし、交配の機会を多くするための開花調節の方法および花粉の貯臓法を検討したうえで、種々の組合せの種間及び属間交配を試みた。1.これまでに明らかにされていないCrinum powellii cv.Album及びZephyranthes candidaについて、開花特性を調べたところ、前者は花芽が雌ずい形成期に達した後に6〜15/12℃で45日間処理することによって開花期を調節できること、また後者では冬期も加温して栽培すると周年にわたって開花を続けることが分かった。2.花粉の貯臓条件を調べたところ、硝酸マグネシュウム飽和溶液を用いて湿度を58.8%に保ち、ー18℃で貯蔵すると、6か月後においても高い発芽能力を維持していた。3.自然開花あるいは開花調節によって開花した母株に開葯直後の花粉あるいは貯蔵花粉を用い、21組合せの種間交配、63組合せの属間交配を行った。種子形成が認められたのは種間交配の11組合せ、属間交配の22組合せであり、バ-ミキュライトに播種して発芽が認められたのは種間交配の5組合せ、属間交配の10組合せであった。4.種子を形成しながら発芽に至らなかったものには、胚がほとんど確認できないものと未発達の状態でとどまっているものがあった。後者では胚珠培養によって発芽が可能になるのではないかと考え、バ-ミキュライト播種で発芽の見られなかったCyrtanthus mackenii X Clivia miniataおよびLycoris属の種間交配によって得られた未熟胚珠を1/2MS培地で培養すると、発芽が認められた。5.種間および属間交配で発芽の認められた個体は現在発育中であるが、初期形態から明らかに両親の中間タイプを示すものを確認している。