著者
奥野 拓也
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本年度は昨年度まで用いてきたNiFe多結晶試料に加えCoNbZrアモルファス合金試料を用いて磁気渦中心の垂直磁化(吹き出し磁化)の磁気的性質を調べ、ブロッホポイント(BP)と呼ばれる原子サイズの磁気構造が関係する磁化反転過程CoNbZrはNiFeと同様磁気異方性が無視できるほど小さく、NiFeと比べ構造のみが違う(多結晶とアモルファス)系であると考えられる。まず膜厚60nmのCoNbZrアモルファス膜を直径450mmの円盤状ドットに加工し、CoNbZrアモルファス膜における吹き出し磁化の反転磁場を測定した。その結果、NiFe試料と比較して、反転磁場値はほぼ同じであった。両者の飽和磁化はほぼ等しく、反転磁場値は飽和磁化に依存することが示唆される。一方、反転磁場分布はCoNbZr試料の方が明らかに小さくなり、反転磁場分布が膜質によって大きく依存することがわかった。吹き出し磁化の反転過程においては原子サイズの磁気構造であるブロッホポイント(BP)が試料表面に生成し、進行すると考えられており、結晶粒界といった交換結合のミクロな分布が反転磁場分布に大きくするという以上の結果は、吹き出し磁化の反転過程がBPの生成、進行を伴うことを強く支持する。次に上記CoNbZr試料を用いて反転磁場の温度依存性を調べた。強磁性転移温度より十分低い温度領域では、反転磁場の温度依存性を調べることは、外部磁場に対するエネルギー障壁の高さの変化を調べることになる。反転磁場の温度依存性より、吹き出し磁化の磁化反転におけるエネルギー障壁の変化は外部磁場の1乗に比例することが判明し、通常の微小磁性体の3/2乗に比例する振舞いとは異なることがわかった。また、Thiavilleらがシミュレーション計算により求めたエネルギー障壁の外部磁場依存性と比較すると、実験結果との良い一致はみられなかった。シミュレーションではメッシュサイズ以下の微細磁気構造は原理的に再現できないことから、この結果は吹き出し磁化の反転に際し彼らのメッシュサイズ(2nm)以下の磁気構造、つまりBPの出現を示唆する。

言及状況

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こんな研究ありました:微細加工法による磁性体ドットの作製と磁気的性質(奥野 拓也) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/02J01574

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