著者
中山 桂
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

昨年度に引き続き、2頭のサルが棒をひいて餌をとる課題をおこなった。この装置では、手の届かない場所にあるテーブルに餌がおかれており、サルは棒をひいてテーブルをひきよせて餌をとることができる。1頭が片側から棒をひくと力の方向にテーブルが回転、2頭が同時に両側の棒をひくとテーブル全体が力の方向にスライドするよう装置が工夫されている。このしくみにより、協力しないか(単独でひくか)・協力するか(2頭で一緒にひくか)をサルに判断させることが可能になる。単独でひくと少量の餌がすぐに手に入るが、協力するとより多くの餌を手に入れることができるときに、サルがどのような意志決定をおこなうかを調べた。今年度は、協力関係の成立したペアを対象に、協力がどのような条件でおこるのか、またどういった要因が協力関係の維持に影響するのかを検討した。まず、(1)高い成功率で協力したのは、餌に対する社会的寛容が高く、協力における役割分担がパターン化しているペアであることがわかった。そして、(2)いったん協力関係が成立した後でも、ペアのうち片方もしく双方が、少量でもすぐに手に入る餌を好む傾向が強い場合には、協力関係がこわれやすいことが確認された。興味深いのは、(3)少量でもすぐに手に入る餌を好む傾向と、働かずして相手の餌を横取りする傾向の間に相関がみられたことである。

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こんな研究ありました:フサオマキザルにおける協力行動と他者の役割の理解(中山 桂) http://t.co/grQPogwP

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