著者
植野 洋志
出版者
大阪医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

ゴシポールの多岐にわたる作用機構の解明の為に、二枚貝であるSpisula solidissimaの精子をモデルとして実験を進めた。まずは、精子の細胞膜表面に存在するゴシポールの受容体と思われるタンパク質の同定を目標とした。Spisulaより多量の精子を採取し、Triton X-100を含む緩衝液で精子を処理後、可溶化されたタンパク質の精製をアフィニティーカラムを使って試みた。アフィニティーカラムには、ゴシポール、および、ゴシポールの酸化物であり、精子とのインターラクションの後、誘導されると思われるゴシポロンを幾種かの市販のアフィニティーゲルにカップリングさせたものを準備した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法による解析の結果、幾種の特徴的なバンドが観測された。その内、3種類のタンパク質をゴシポール受容体として精製をおこなった。ゴシポールの構造類似化合物および誘導体と精子との相互作用を検討した。これにより、ゴシポールの構造上、どの部位がその生理作用発現に関与するかを知る事ができると考えた。20種近い構造類似物および誘導体が及ぼす精子の運動能力、酸素消費量、そして卵子との受精効率への効果を比較検討した。その結果、アルデヒド基の存在は全ての生理作用に必須であり、受精効率と構造上との間での相関はなかったものの、ゴシポロンの生成には第2芳香族環に存在する水素原子の存在が必要であることが判明した。ゴシポールのもつ生理作用をより深く理解する意味で精子運動を阻害する他の化合物、例えばカルシウムチャンネルブロッカーやtricyclic antidepressant剤の作用を検討した。これらの試薬とゴシポールとの拮抗作用も検討した。近年、生殖のメカニズムに神経伝達物質であるGABAおよびGABAの合成を司るグルタミン酸デカルボキシラーゼの関与が示唆されており、我々は偶然に抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体が前出のゴシポール受容体タンパク質の一部と反応することを見つけた。現在、その意味合いを解明中であるが、GABAを通じての精子運動の制御機構は未だ知られておらず今後の課題として興味深い。

言及状況

Twitter (1 users, 6 posts, 1 favorites)

男の健康性健常性健全性忖度バイオパワーの威力が諸君を既知の抗精子物質であるゴシポール https://t.co/9kgf0TDeiy https://t.co/rHj2gKeVkQ https://t.co/4KZbfBYSS6 の活用から遠ざけていたのではないのか

収集済み URL リスト