著者
佐々木 節
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

初期宇宙における量子トンネル現象には,場の真空の相転移をはじめとして,インフレーション宇宙における様々な位相的欠陥の生成などがあり,それらは宇宙の大域的構造形成に深く関わっている.本研究では,こうした宇宙特有の環境下での量子トンネル現象の一般的・系統的な解析を目指して研究を進めた.以下はその成果である.前年度までに偽の真空の背景時空がド・ジッター時空であることを考慮した真空のモード関数を求めることに成功した.そして通常の双曲空間では規格化できないモード(超曲率モード)が曲がった時空上では不可欠であることを発見したが,今年度,泡自身の壁の揺らぎも考慮に入れた定式化を行なった結果,そのモードも超曲率モードであり,その泡の内部状態への寄与が,一般には無視できないことが判明した.これらの結果とインフレーション宇宙モデルを組み合わせ,新たに開いた宇宙の「一つ泡インフレーションモデル」を提唱した.また,(1)で判明した超曲率モードの宇宙背景放射の大角度温度揺らぎへの影響を簡単な宇宙モデルについて解析し,モデルへの制限を調べた.その結果,現在の大域的構造を説明する開いた宇宙のインフレーションモデルが十分可能であることを確かめた.

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初期宇宙における量子トンネル現象 Quantum tunneling in the early universe https://t.co/EWi3DzZHoZ

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