著者
北山 滋雄 土肥 敏博
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

神経伝達物質トランスポーターは神経終末より遊離された伝達物質を再取込みし、その作用を速やかに終結させる役割を果たす重要な膜機能蛋白である。多様な中枢作用を有し麻酔であるコカインにこれらトランスポーターのうちモノアミントランスポーターに特異的に作用するが、また強力な局所麻酔作用も有していることが知られている。末梢神経系におけるこの作用は血管収縮をもたらし、その結果持続的な局所麻酔作用を示すが、一方合成局所麻酔薬はこの様な性質を持たないとされてきた。我々はコカインの中枢作用、特に強化作用に深く関連すると考えられているドーパミントランスポーターをクローニングし、このトランスポーターに対するコカインの作用様式を分子レベルで研究してきた。本研究では合成局所麻酔薬とコカインの作用の相違に着目し、ドーパミン、GABA両トランスポーターに対する効果の比較より構造活性相関を解析した。ラットドーパミントランスポーター発現COS細胞において、合成局所麻酔薬はコカイン同様いづれも濃度依存的に|3H|dopamine(DA)の取込みを抑制し、その作用強度はcocaine>dibucaine>tetracaine>benzocaine>procaine>lidocaineの順であった。コカイン誘導体|3H|CFT結合もこれら局所麻酔薬により抑制された。これら両抑制効果の作用強度は良く一致していたが、局所麻酔作用強度とは必ずしも一致しなかった。外液Na^+濃度を減少させても|3H|CFT結合に対する局所麻酔薬の抑制効果は変わらなかった。一方マウスGABAトランスポーター発現COS細胞において|3H|GABA取込みはこれら局所麻酔薬によって抑制されたが、|3H|DA取込み抑制に比べると弱く、|C50は約10倍高かった。また|3H|GABA取込み抑制の作用強度は局所麻酔作用強度と良く一致していた。以上の結果より合成局所麻酔薬もまたコカイン同様ドーパミントランスポーターに選択的に作用することを明らかにした。その作用機序としてはトランスポーター上でコカイン作用部位と一部競合する作用部位を有することを示唆された。

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