著者
山口 和也
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

光合成細菌にニッケル含有酵素ウレアーゼが存在することは、これまでほとんど知られていない。本研究において、紅色無硫黄細菌であるRhodobacter capsulatusがウレアーゼを生合成することを見いだし、さらにこの細菌のウレアーゼを単離精製することに初めて成功した。この光合成細菌は、通常の生育条件下ではウレアーゼを生合成することなく生育する。ところが、窒素源をアンモニウムイオンから尿素・アルギニン等に変え、窒素代謝系を制御することにより、この菌体におけるウレアーゼ生合成を誘導することができた。また、窒素飢餓条件下にすることで生合成されるウレアーゼの量が増加することも明らかになった。さらに、ウレアーゼ生合成過程においてニッケルイオンを添加するとウレアーゼ活性が著しく促進されることより、この細菌のウレアーゼも他の菌体のものと同様にニッケルを含む酵素であることも示唆された。光合成細菌中の色素や複合タンパク質の生成をおさえ、より多くのウレアーゼの単離精製を行なうために、暗所好気的条件下で培養した細菌からウレアーゼの精製を行なった。ウリアーゼ精製の際に用いるバッファーに2-メルカプトエタノールを添加することにより、精製効率は飛躍的に向上することが明らかになった。この添加剤は酵素の活性中心である複核ニッケルに架橋することにより酵素を安定化させる働きをしているものと考えられる。さらにイオン交換・疎水クロマト法により、従来単離されなかった光合成細菌のウレアーゼの精製に成功し、酵素比活性は38μmol(Urea)/min.mgまで向上した。SDSゲル電気泳動により、サブユニットの分子量は67KDであることも判明した。本研究により、高度に精製された新規の光合成細菌ウレアーゼが得られ、ウレアーゼの構造と機能の関連性を解明し生体中におけるニッケルイオン役割を明らかにするための礎が得られた。

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