著者
平原 衣梨
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は、π共役系有機配位子の自己組織化を利用した新規集積型白金錯体の開発に取り組み、二色性の色変化を伴う熱相転移挙動について調査した。分子設計においては、剛直なπディスク状ユニットであるトリフェニレン(TP)がカラム集積しやすい性質に着眼し、金属配位能を付与したTP配位子を開発した。これを同じく平面性の高い配位様式を好む二価Ptイオンと反応させ、白金二核TP錯体を得た。この錯体はアセトニトリルに溶解してオレンジ色、固体粉末においては深青色を呈する。ところが、室温で単離したこの深青色粉末を加熱すると、昇温過程175℃付近で相転移するとともに赤色粉末へと変化する。このとき深青色の相では、錯体はある程度スタックしながら凝集した状態であるのに対し、この赤色に呈色した第二の相ではより高度な結晶性を獲得し、対称性の高いスクエア型のナノ粒子化することが明らかになった。さらに、この赤色粉末は乳鉢で擦るといった力学的負荷をかけることで、初期の深青色へ戻る。つまり、熱および圧力という外的な物理刺激に応答して二つの準安定相を往復し、各相がそれぞれ異なる発色をもつことによってそのダイナミクスを目で見て知ることが可能な系といえる。また発光スペクトルにおいては、第一相(深青色)では無発光であるのに対し、第二相(赤色)では680nm付近にMMLCT(金属-金属/配位子間電荷移動)遷移由来と考えられる強い発光が確認できており、Pt-Pt間結合の形成を強く支持している。このように、ある次元性を有する集積構造制御しながら、バルク固体にも関わらず外部刺激に応答した可逆かつ動的ふるまいをみせる材料は非常に稀少であり有用性が高い。π共役系有機分子の制御性を導入することで、固体無機材料に潜在する多彩な物性をより高度に操作できれば、今後の新規材料開発に大きく貢献できるものと思われる。

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