著者
周東 美材
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は、「童謡のメディア論--2雑誌『赤い鳥』における「声」の重層と再編」『社会学評論』234号(日本社会学会)の発表を中心として、本研究がこれまで主たる研究課題としてきた近代日本における童謡とメディアに関する歴史社会学的研究の実証的・理論的研究のまとめを行った。本論文では童謡における「声」と「文字」の文化の重なりを考察しながら、「文字」が作り出す「声」の文化のありようや、複製技術時代における音楽文化のありようについての提言を行ったものである。また、「鳴り響く家庭空間--1910-20年代日本における家庭音楽の言説」『年報社会学論集』21号(関東社会学会)では、蓄音機やレコードが音楽のメディアとして「家庭」という空間に浸透していくプロセスについて、それらのメディアが普及する以前の言説、とりわけ音楽雑誌における「家庭音楽」を取り上げて論じた。言説の内容や担い手、言及される音楽ジャンルの変化をたどりながら、レコード普及の言説といかなる関係を結び、接合していったのかを考察した。いずれの論文も研究課題である近代日本の音楽の歴史におけるメディアと子どもの関わりを論じたものであり、メディアによる音楽文化の再編を論じた点に特に独自性がある。ここで言う音楽文化の再編とは、「音楽」概念の再定義と、音楽の制作・流通・受容をめぐるシステムの再編制である。また、本年度は、高校野球における応援演奏に関する研究にも考察の範囲を広げた。いわゆる「夏の甲子園」を取り上げつつ、ブラスバンドによって演奏されている楽曲について論じたものである。甲子園における音楽レパートリーにはいかなるものがあるのか、そのレパートリーはいかなる仕組みによって生み出されているのかを考察した。これまで本研究では、主にメディア技術の変化による制度やシステムの再編を論じ、音楽内容の変化は付随的な変化として位置付けようとする傾向あったが、むしろこの論考では音楽テクストの変容を中心に考察し、音楽テクストをめぐって展開される媒介作用(メディエーション)の一様態を考究した。上記の各論文とも社会学のみならず、音楽学やポピュラー音楽研究に対し社会学の立場から一石を投じるものでもある。

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こんな研究ありました:近代日本音楽におけるメディアと子どもに関する歴史社会的研究(周東 美材) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/06J11698
こんな研究ありました:近代日本音楽におけるメディアと子どもに関する歴史社会的研究(周東 美材) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/06J11698
こんな研究ありました:近代日本音楽におけるメディアと子どもに関する歴史社会的研究(周東 美材) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/06J11698

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