- 著者
-
秋山 伸一
原口 みさ子
古川 龍彦
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 重点領域研究
- 巻号頁・発行日
- 1995
MRPがグルタチオン抱合体排出ポンプとして機能していることを示唆する報告がなされた。MRPの発現している多剤耐性変異株C-A120からmembrane vesicleを調製し、ロイコトリエンC_4(LTC_4)の取り込みを調べたところ、ATP依存性にLTC_4を輸送することが判明した。LTC_4に対するKm値は1,55μM、ATPに対するKm値は80μMであった。LTC_4の取り込みはジニトロフェノールやシスプラチンのグルタチオン抱合体で阻害された。これらの結果から、C-A120細胞で発現しているMRPがグルタチオン抱合体を輸送することが明らかとなった。そこでブチオンスルホキシミン(BSO)により細胞内のグルタチオン(GSH)レベルを低下させることによりC-A120細胞の薬剤耐性を克服できるかを調べたところ、100μMのBSOはC-A120細胞のビンクリスチン(VCR)に対する耐性を完全に克服した。BSOはC-A120細胞のGSHレベルを親株KB-3-1細胞でのGSHレベルに低下させ、C-A120細胞内へのVCRの蓄積も上昇させた。つぎにP-糖蛋白質の関与した多剤耐性を克服する薬剤(ベラパミール、セファランチン、PAK-104P)がMRPの関与した多剤耐性を克服するかを検討した。ピリジン誘導体PAK-104PのみがC-A120細胞のVCRに対する耐性を完全に克服した。PAK-104PはC-A120細胞へのVCRの蓄積を増加させ、C-A120membrane vesicleへのLTC4の取り込みを阻害した。VCRのグルタチオン抱合体はまだ確認されていないが、VCRがグルタチオン抱合されMRPにより細胞外へ排出されることを示唆している。また、PAK-104PはP-糖蛋白質とMRPを同時に発現した多剤耐性腫瘍の耐性克服に有用と考えられた。腫瘍でのMRPの発現を調べたところ、肺扁平上皮癌で高い発現が認められた。胃癌や大腸癌では肺扁平上皮癌でみられたような高いMRPの発現を示すものはなかった。肺扁平上皮癌の一部では、少なくとも部分的にMRPが抗がん剤耐性に関与しているのではないかと考えられた。