著者
中井 宏 吉田 春夫
出版者
国立天文台
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

冥王星の軌道は正のリアプノフ指数を持ちその意味でカオス的な軌道である。本研究では、過去・未来112億年間の外惑星系の数値シミュレーションを行い、海王星と冥王星の間の共鳴関係が冥王星軌道の安定性に果たす役割について調べた。1,従来から知られていた3個の共鳴関係の他に、"海王星と冥王星の昇交点経度の差の3倍と海王星と冥王星の近日点経度の差の和が180度の回り110度の振幅、5.9億年の周期で秤動する。"という新しい関係を見付けた。重力効果だけの働く保存系では、これらの4個の共鳴関係が少なくとも112億年正確に維持することを確かめた。また、これらの関係は冥王星が海王星に大接近するのを妨げるように働き、冥王星の軌道安定化機構として作用していることを確かめた。2,冥王星とその近傍に配置したテスト天体の相空間上での距離は時間と共に指数関数的に増加するが、共鳴関係の振幅以下で飽和し、それ以上には増加しかった。すなわち、冥王星近傍の軌道は海王星との共鳴間系により、運動領域が制限され、軌道要素は周期的変動幅以下でしか変化出来ないことになり、大局的な軌道は準周期運動となるが、軌道要素の差が飽和値以下の微小運動領域内では運動を制限する力が働かないため、軌道はカオス的で、リアプノフ指数は正となることを示した。3,重力効果だけの働く保存系では外惑星の軌道配置は112億年の間、現在と殆ど変わらなかった。これは、太陽系誕生期には非保存力が働いていたことを暗示している。現在の惑星配置及び惑星相互の共鳴関係がエネルギー散逸過程とどう結び付くのかは今後の重要な研究課題である。

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