著者
水多 陽子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

両候補遺伝子の相補性検定が終了し、日本晴とカサラス間で雑種花粉の不発芽を引き起こしている遺伝子は第1染色体上のDOPPELGANGER(DPL)1,第6染色体上のDPL2と名付けた機能未知の新規遺伝子であることが証明された。DPL1とDPL2は被子植物で高度に保存された重複遺伝子であり、遺伝子構造とRNA・タンパク質の発現解析からはカサラスアリルのDPL1遺伝子と日本晴アリルのDPL2遺伝子は機能欠損型であることが分かった。また、相補性検定の結果からはカサラスアリルのDPL2遺伝子と日本晴アリルのDPL1遺伝子は機能型であることが明らかとなった。リアルタイムRT-PCRとin situ hybridizationの結果から、機能的なDPLのmRNAは二核期の花粉内に蓄積されており、花粉発芽に対し何らかの重要な役割を持っていることを示唆している。また、ゲノム解析が終了した四種の被子植物(ヤマカモジグサ、ソルガム、トウモロコシ)とのシンテニーを元にDPLと名付けた原因遺伝子周辺のゲノム配列を比較することで、DPL遺伝子の重複はイネとヤマカモジグサが分岐した後に起きたことが分かった。本研究は種分化を隔離遺伝子の進化と隔離機構の成立という観点から種や属を超えて検証できた数少ない例である。発現解析からもこの遺伝子は花粉伝達に重要な新規遺伝子であることが示されており、今後DPLの機能を解明することはイネだけでなく、被子植物の生殖過程について有用な知見をもたらすことが予想される。現在、これまでの結果をまとめ、論文を投稿中である。

言及状況

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こんな研究ありました:イネ亜種間交雑における生殖的隔離障壁因子の単離及び機能解析(水多 陽子) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/07J06821

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