著者
大橋 英寿 桐田 幸子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

沖縄シャーマニズム現象についての社会心理学の立場からのフィールドワークから以下のような研究成果がえられた。1. 沖縄シャーマニズムには一種の「信仰治療」が内在しており、今日も、現代医療と拮抗して機能している。本研究では、(1)シャーマン「ユタ」の治療儀礼の観察によってシャーマニズムの治療メカニズムを明らかにし、(2)クライエントの対処行動の事例研究によって現代医療と信仰治療が地域社会で機能している実態を明らかにすることができた。2. 地域社会でユタがはたしている役割を、戸別訪問による主婦50名の面接調査の結果をもとに分析した。その結果、(1)主婦のユタ依存は女性のライフサイクル全体の社会化過程と密接に関連していること、(2)土着シャーマニズムは沖縄の伝統文化の3側面、すなわち、(1)宗教,(祖先崇拝)、(2)相続法(慣習法)、(3)治療(信仰治療)を内包しており、それらが、外来文化、すなわち(1)外来の諸宗教、(2)新民法、(3)現代医療と拮抗関係にあることを確認できた。3. 沖縄県が移民を多く出していることに注目して、ブラジルにおける沖縄シャーマニズムの実態を調査した結果を分析した。ブラジルで活動しているユタの巫業形態は、沖縄シャーマニズムを継承している度合いと、ブラジルの宗教要素を取り込んでいる様態から、ユタを、(1)伝統型、(2)折衷型、(3)融合型の3型に分けられる。要するに、シャーマニズムは「危機や問題場面への文化的対処システム」であり、シャーマン「ユタ」は「野のカウンセラー」あるというのが、沖縄シャーマニズム研究からみちびかれた本研究の結論である。

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