著者
平田 彰 新船 幸二 桜井 誠人 常田 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、単結晶育成時における温度差と濃度差に起因するマランゴニ対流の相互干渉機構を厳密に解明し,それに基づいたマランゴニ対流の抑制・促進等の制御手法を確立し,単結晶の高品質化手法を確立することを目的として研究を行っている。本年度は、前年度に引き続き,半導体単結晶育成の一つである水平ブリッジマン法によりInSb結晶成長実験を行い,初期融液濃度を変化させることにより温度差および濃度差マランゴニ対流が同方向に作用する系(促進系)と,互いに逆方向に作用する系(抑制系)の融液自由界面上の界面流速を測定した。その結果,抑制系においては,自由界面流れの方向が、融液から結晶方向(温度差マランゴニ対流による)及び結晶から融液方向(濃度差マランゴニ対流による)が同時に存在し,流動の淀み点(2方向の流れが衝突する点)が存在する場合があることが明らかになった。これは,同時に行った数値シュミュレーションからも同様の結果が得られた。さらに抑制系に関しては,航空機を利用した微小重力場においても実験を実施した。その際,放物飛行中の到達重力レベルを変化させ,自然対流が融液自由界面流れに及ぼす影響を観察した。その結果,本実験系においては,自然対流は表面流速にはほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。以上の結果から,結晶成長時の融液側移動現象が,自然対流よりも,結晶成長時の偏析現象に伴う濃度差マランゴニ対流に強く影響を受けることが明らかになった。

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