著者
小笠原 勝 竹内 安智
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

植物カバーマルチを利用した少耕起栽培とは、過度の耕耘による作土の流亡を防ぐための作物栽培技術であり、特に米国において積極的な普及が試みられている。種々の問題を抱えるわが国の農業においても、低投入持続型農業あるいは農薬の総合防除と密接に関連する少耕起栽培の可能性を明らかにする必要がある。そこで、本研究では、「日本における植物カバーマルチを利用した少耕起栽培の可能性」を、ライムギ〜ダイズを例にとり、しかも、実際場面への普及を見据えた実証的な研究として位置づけ、6000m^2の大規模圃試験を実施した。ライムギをカバーマルチとするダイズ栽培の実際は、1)ダイズ収穫、2)ライムギ播種、3)ライムギのマルチ化、4)ダイズの不耕起播種の4つの作業から成る。本研究では、汎用コンバイン、汎用播種機および背負式除草剤散布を用いて、1)〜3)の作業を遂行することが出来たが、4)については、播種精度が牧草地用簡易更新機を用いた場合に著しく低下し、専用の不耕起播種機が開発されない限り、「日本における植物カバーマルチを利用した少耕起栽培の普及」は非常に困難であることが判明した。少耕起栽培の利点は、雑草発生量の低下と、土壌固結の防止において確認されたが、新しい作物栽培技術の導入に際しては、その必要性、意義、経済性を実際場面に則した実証的研究によって評価することの重要性が再確認された。

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