著者
太田 紘史
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

研究計画に則り、心脳問題への学際的アプローチを図った。そのために、(1)心的状態と神経状態の多層的構造の機能主義的分析と、(2)機能主義と調和する心身問題の形而上学的研究を行った。(1)心と脳の多層的構造の機能主義的研究心身問題で根本的な問題になる意識について、その認知神経基盤の連続的かつ多層的な機能的分析を遂行した。一般に機能主義的な物理主義は、意識を共時的-通時的な面で多層的な機能的クラスターとして分析しようとする。そこで当研究者は、意識の統一構造を明確化する分析を提案し、そのように分析されて得られた個々の意識的状態をある種の表象として分析する理論を提案し擁護した。さらにそれが、認知神経科学における意識の相関項(Neural Correlates of Consciousness : NCC)の知見とどのように調和しうるかについて検討し提案した。(2)心身問題の形而上学的研究上記のような、心を因果的役割によって分析する機能主義に基づいた物理主義を擁護・展開するために、形而上学的な心脳問題の研究を行った。とりわけ、機能主義的な物理主義を反駁するとされる一連の思考実験と形而上学的見解について、検討を行った。それらには具体的には、中国国家論証、逆転地球、知識論証が含まれる。当研究者は、それらがどのように論理的欠陥を抱えており、そしてそれが哲学と認知神経科学の総合的な機能主義理論を反駁しないのかについて提案した。

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