著者
本行 忠志 野村 大成 青笹 克之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

膿胸関連リンパ腫(PAL)と甲状腺リンパ腫(TL)のp53,K・rasの遺伝子変異をPCR・“Cold SSCP"法,Direct sequencing法にて解析した。TLは、microsatellite instability(MSI)も検討した。PALでは、21症例中14症(67%)にp53遺伝子の変異を認めた。13個の点突然変異のうち12個(92%)にG:C→A:T transition、2個(15%)にCpG siteのtransition,10個(77%)にdipyrimidine siteのtransitionを認めた。これは、PAL以外のリンパ腫や放射能被爆した人に発生した肺癌における変異のパターンと大きく異なっている。K・rasの変異は、3例(14%)で、p53の変異との関連性は見られなかった。TLでは、21症例中2例(9.5%)にp53の変異を認め(codon190.codon272)、K・ras変異は4例(19%)(2例codon12、2例codon13)であった。次に21例のTLに対して16個の異なったmicrosatellite repeatsをPCR法にて解析した。21例のTLは病理学的にdiffuse large B cell lymphoma(DLBL)10例、follicle center lymphoma6例、marginal zone B cell lymphoma of extranodaltype3例、lymphoplasmacytic type2例に分類され、DLBLのみに5例microsatellite instability(MSI)が見られ、他のタイプに対して有意(p<0.05)に高い頻度であった。これら5例中4例(80%)がK・ras遺伝子の変異を伴っており、replication error(RER)とK・ras変異の関連性を示唆した。また、これは、“遺伝的不安定さ"がTLのlow gradeからhigh gradeへのprogressionに関与している可能性を示唆している。PALとTLの遺伝子変異には明らかな違いが見られた。PALではEBV感染(PALは100%)の影響や、長期にわたる治療薬や細菌やウイルスの産物がp53遺伝子に特殊な変異を引き起こした可能性が、TLでは慢性甲状腺炎に加え、EBV感染の影響や、免疫異常によりRERが起こった可能性が考えられる。今後、さらに各リンパ腫に影響を及す因子について追求していきたい。

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