著者
清原 達也 渡部 健二 野口 眞三郎 青笹 克之
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.259-264, 2005-08-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
6

今年度で30年目を迎える大阪大学医学部学士編入学制度の成果を総括するために, 学士編入学者のプロフィールと卒後進路について分析を行った. 現在までに通算で453名が入学している. 受験者はバブル期に一時減少したがバブルの崩壊とともに増加した. 入学者のうち男性が93%を占め, 入学時の年齢は30歳未満が82%で24-26歳にピークがあった. 出身大学は国立大学が96%を占めた. 学歴は学士が57%, 修士が36%, 博士が7%. 理科系の専攻が84%であった. 卒後進路としては, 一般学生との比較で学士編入学者の方が基礎医学系に進む割合が高かった. また, 学士編入学者は一般学生と比べて教授や病院長などの管理職を務めている率が高かったが, その一方で開業率も高かった. 卒後20年目以上では, 学士編入学者の勤務先は大学関係が14%で病院関係が44%. 9.6%は教授で7%は病院長, 開業医は27%であった. 以上より大阪大学医学部の学士編入学制度は理科系出身で目的意識が明確で有能な人材を集めて指導的立場にある卒業生を輩出しているとの結果が得られた.
著者
本行 忠志 野村 大成 青笹 克之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

膿胸関連リンパ腫(PAL)と甲状腺リンパ腫(TL)のp53,K・rasの遺伝子変異をPCR・“Cold SSCP"法,Direct sequencing法にて解析した。TLは、microsatellite instability(MSI)も検討した。PALでは、21症例中14症(67%)にp53遺伝子の変異を認めた。13個の点突然変異のうち12個(92%)にG:C→A:T transition、2個(15%)にCpG siteのtransition,10個(77%)にdipyrimidine siteのtransitionを認めた。これは、PAL以外のリンパ腫や放射能被爆した人に発生した肺癌における変異のパターンと大きく異なっている。K・rasの変異は、3例(14%)で、p53の変異との関連性は見られなかった。TLでは、21症例中2例(9.5%)にp53の変異を認め(codon190.codon272)、K・ras変異は4例(19%)(2例codon12、2例codon13)であった。次に21例のTLに対して16個の異なったmicrosatellite repeatsをPCR法にて解析した。21例のTLは病理学的にdiffuse large B cell lymphoma(DLBL)10例、follicle center lymphoma6例、marginal zone B cell lymphoma of extranodaltype3例、lymphoplasmacytic type2例に分類され、DLBLのみに5例microsatellite instability(MSI)が見られ、他のタイプに対して有意(p<0.05)に高い頻度であった。これら5例中4例(80%)がK・ras遺伝子の変異を伴っており、replication error(RER)とK・ras変異の関連性を示唆した。また、これは、“遺伝的不安定さ"がTLのlow gradeからhigh gradeへのprogressionに関与している可能性を示唆している。PALとTLの遺伝子変異には明らかな違いが見られた。PALではEBV感染(PALは100%)の影響や、長期にわたる治療薬や細菌やウイルスの産物がp53遺伝子に特殊な変異を引き起こした可能性が、TLでは慢性甲状腺炎に加え、EBV感染の影響や、免疫異常によりRERが起こった可能性が考えられる。今後、さらに各リンパ腫に影響を及す因子について追求していきたい。