著者
野口 舞子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、ムラービト朝とムワッヒド朝という共にマグリブに興り、アンダルス(イスラーム治世下のイベリア半島)支配を行った外来政権を対象に比較分析を行い、両王朝のアンダルス支配と在地社会におけるその受容の実態を明らかにすることである。その結果、アンダルス史における外来政権の支配の性格やイスラーム世界におけるアンダルスの位置づけについて、一つの展望を示すことを目的としている。平成21年度は、ムラービト朝期のアンダルスのウラマー(イスラーム知識人)の実態と、彼らと王朝の支配の関係を明らかにするため、文献調査と現地調査を中心に行った。文献調査では、史料としてアラビア語年代記、伝記集を用いて研究を進めた。本年度は特に、マグリブ地域の記述に特化した史料を加えて用いることで検討対象地域を広げ、両地域の比較作業を通じてムラービト朝のアンダルス支配の実態解明を目指した。これらの成果としては、邦語、英語で研究会報告を3回行った。他方、文献調査と並行して、スペインのマドリードおよびモロッコのラバトの図書館、文書館において現地調査を行った。これは日本では入手することが出来ない史資料を収集するためや、対象地域における最新の研究動向を把握するために本研究に必要不可欠のものである。また、本研究で対象としているように、ムラービト朝の支配領域は現在のスペイン、モロッコ地域にまたがっていたため、両地域での現地調査が必要である。こうした現地調査では、文献を収集するだけでなく、現地研究者とも直接議論を交わすことで研究の精度を高めると共に、新たな知見を得ることに努め、本研究に大きな進行が見られた。

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