著者
奥田 晶彦 折茂 彰
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

F9あるいはP19細胞は、哺乳動物(マウス)の発生初期を反映する培養細胞であり、これらの細胞にレチノイン酸等を加えることにより、細胞が分化し、神経あるいは心筋を成す細胞等に変化させることができる。それ故、これらの細胞は哺乳動物の初期発生を研究する上でよいモデルシステムとなっている。また、これらの細胞を用いた研究から転写に関して興味深い報告が数多く成されている。その1つがレチノインレセプター(RAR)β2遺伝子の発現に関するものである。この遺伝子のプロモーターは、RAR認識配列を2つ有しており、この遺伝子の発現は自分自身の遺伝子産物により自己調節されている。但し、この遺伝子の発現にはRARだけでは十分ではなく、初期胚特異的に発現する転写補助因子が必要であることが実験的に証明されている。私は、1998年に初期胚特異的転写補助因子UTF1をクローン化した。UTF1のアミノ酸配列を注意深く見てみると、種保存領域の中にLxxLLモチーフが2つ存在していることがわかった。そこで、私はUTF1が、上記の初期胚特異的転写補助因子に相当するのではないかと考え研究を始めた。まず、COS細胞への遺伝子導入実験によりUTF1が確かにRARβ2遺伝子のプロモーターを活性化する能力をもつタンパク質であることがわかった。且つ、この活性化は、プロモーター上に存在するRAR認識配列を介したものであることが確認された。また、GSTプルダウンアッセイによりUTF1とRARが直接結合することが確認された。但し、この結合は、レチノイン酸及びRARのAF2領域に非依存性であることが明らかになり、TIF-2等のステロイドホルモンレセプター補助因子とは、異なる様式で結合することがわかった。

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こんな研究ありました:初期胚転写コアクティベーターUTF1のレチノイン酸レセプター補助因子としての役割(奥田 晶彦) http://t.co/juUmw5Hokb

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