著者
高橋 達也
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1993年から1997年まで、マーシャル諸島甲状腺研究(The Marshall Islands Nationwide Thyroid Disease Study)によって、現地で医学的・疫学調査が行われた。具体的には、甲状腺疾患に対する臨床理学的検査、超音波検査、穿刺吸引細胞診、癌が疑われる症例に対する外科手術、及び外科手術標本に対する病理組織学的検討が実施された。また、甲状腺機能検査として、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(T3、T4)、及び抗甲状腺自己抗体が測定された。さらに、随時尿のヨード排泄量も測定された。今回、その研究の結果を踏まえて放射線による甲状腺癌発生とヨード欠乏について検討した。ヨード欠乏は、甲状腺結節のリスクであることは広く知られている。そこで、尿中のヨード濃度を研究調査に参加した364人の成人と、69人の子供の随時尿について測定した。また、代表的な食物についてヨード含有量を測定した。マジェロ在住の309人では、正常だったのは25%で、他はすべてヨード欠乏状態だった。特に、3人(1%)は、重度の欠乏状態だった。この中での、甲状腺結節発生頻度を見るとヨード欠乏群は女性で、正常群の3倍の発生率だった。しかし、男性ではこの傾向はなかった。外洋に孤立するリキエップ環礁での成人55人では、正常はわずか5人(9%)で残り90%以上は、ヨード欠乏であった。このうち7人(13%)は、重度欠乏であった。甲状腺結節の発生は、女性では1.2倍であった。本研究によって、今までは予想もされていなかったほど高頻度(30%以上)の中等度-重度ヨード欠乏が認められた。この、マーシャル諸島での食生活上の問題の原因は、不明である。しかし、放射線被曝による甲状腺結節発生を修飾している可能性が大きく、今後の継続した研究が必要である。

言及状況

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[paper][lib] いつか / 高橋達也「マーシャル諸島住民の放射線被曝後の甲状腺がん発症に対するヨード欠乏の影響」1999年度~2000年度 https://t.co/YDj97CDtuP
@M16Ra @mariscontact (続く→) 知りました。藤盛啓成東北大学病院准教授は宮城県丸森町で安全宣言した学者だそうです。http://t.co/YAJPCtEpでは、マーシャル諸島の甲状腺結節をヨード不足によると言っています。 

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